「孝ちゃん、明日から直子のショー見に東京行くのな新幹線の切符2枚取っておいて」
「え?行かないよ私」里香がすかさず断わった。
「小原の家訓は『働かざるもの食うべからず』や…心配せんでも優子は来えへんさかい」
「そうなんですか!?」孝枝は目を丸くした。
「あの子らけったいでな、お互いのショーは見よらへんねや」
「骨肉の争いですねえハハハ!」孝枝は笑った。
>自由にお洒落を楽しめる時代…この子は頑としてジャージしか着ません
直子のショーの控え室で糸子は壁に寄りかかっているジャージ姿の里香を見た。
「5分前です」ショーのスタッフの声がした。
直子がモデルに細かく指示をして間もなくショーが始まる。
糸子は控え室に設置されているモニターでショーの様子を見ていた。
ふと振り返ると里香が糸子のすぐ後ろでモニターを眺めていた。
次から次へと現れる直子のデザインした服に糸子は目を輝かせた。
― ショー終了後、パーティ会場には大勢の人間が直子の成功を祝っていた。
直子は白川ナナコ、ジョニーと並んで写真撮影を行っていた。
「やっぱし楽しいなあショーは。…まさに“だんじり”や!」
糸子は満足そうにソファに座っていると直子の長男・修平が糸子に駆け寄る。
「修ちゃん!こらまた一段と男前になったんちゃうけ!」
写真撮影を終えた直子も糸子の元にやってくる。
「里香やんか。どこのクソガキが紛れ込んだ思たわ。何やこの頭?何でジャージなん?」
「関係ない」里香はムッとして直子に言った。
「グレてんけ?かまへんわ。けどええか?ジャージて決めたんやったらジャージや。
絶対に中途半端に脱いだらあかんで?分かったか」
「はあ?」
「ウチもセーラー服ばっかし着てアンタのお母ちゃんに笑われたもんや(笑)」
「直子。そろそろ、ウチら次行くで!」糸子がソファから立ち上がろうとする。
「次?どこ行くん?」直子が怪訝な顔をした。
「ディズニーランド」
「今から?とりあえずホテルに帰って休みよ」
「あかん!まだ5時や!今からホテルなんて帰ってどないすんねん!行くで!」
>3日ほど昼間の東京を連れ回したら里香はあっさり夜寝る様になりました
― 朝、糸子はオハラ洋装店の前にできた店をジロジロと見ていた。
「あの…うちの店になにか?」若い男が糸子に話しかけてきた。
「店開いてんな。おめでとうさん。何屋なん?」
「…金券屋です」篠山真は、切符やチケットを扱っている店だと糸子に説明したが…
>ようわからん商売や…糸子は思わず笑ってしまう。
孝枝と糸子は隣に新しくできた不動産屋について話していた。
「北村も生きちゃあったら今頃甘い汁、吸えとったやろに…後一歩が足らん人生やったな」
糸子は部屋に飾っていた北村の写真を見て言った。
「そやけど“キタムラ”ちゅうたら、おっきいメーカーさんですやんか」
「そら安いか知らんけど、ちゃちいで?」
「そんで売れてんやさかい、あんでええんです(笑)」孝枝と糸子の2人は笑った
>戦争が終わってからこっち皆が皆が成功しました
「時代が良かったんですわ」糸子は店にやってきた記者に語った。
「お嬢様が3人とも有名なデザイナーになられたちゅうのは凄い事ですよ」
「そら、あの子らも頑張ったと思います。ほんでも日本ちゅう国が豊になったおかげです。
今日かて見て下さい。“りんどうの会”ちゅう着物の勉強会なんですわ」
糸子は店に招いた大勢の和服の客人を記者に説明した。
「ところでお嬢様の話ですが…」
「エエやないですか娘の話は(笑)何や、みんな聞きに来はるんやけど…
正直さっぱり記憶がないんですわ~育児なんぞいっつも人任せのろくでもない母親やったさかい。自分の仕事の話やったらなんぼでもできるんやけどな(笑)」
糸子は記者との話を切り上げると集まっていた和服の客に挨拶をして回った。
「いや!糸子先生!」若い和服の男が糸子を呼び止めた。
「はれ!河瀬商会のアホやないか」
「何言うてますのん。最近は僕、そないアホでもないんですよ~」
糸子と河瀬譲が話していると後ろからもう一人(吉岡栄之助)現れた。
「どうも!お初にお目にかかります」
「京都の呉服屋さんかいな。どうりで若いのにえらい着物が様になってる思た」
糸子は受け取った吉岡の名刺を見て言った。
「いや嬉しいわ!糸子先生に褒めてもろたて親父に言うておきます」
「先生、コイツもこう見えて老舗の跡取りなんですわ」横から河瀬が言った。
「かなんなあ!世の中“アホぼん”ばっかりやな!」糸子はソファに腰を下ろした。
「先生!また相談に寄らせてもろても宜しいですか?」
「あかん!相談相談てこの頃の若い男はちょっと甘い顔したらすぐ甘えて来よんや!」
>…ちゅうて、しっかり釘さしといたのにも関わらず
「こんにちわ。先生いはいりますか?」数日後、店に吉岡が現れる。
>さすがアホぼん、何も聞いてません
「…5分やで?忙しいやで」糸子は不機嫌そうに言うと席に着いた。
「譲から先生の話はよう聞いてたんです。譲の曾祖父さん助けてあげはったんでしょ?
金糸の入った生地100反さばいてあげはったんでしょ?」
「…古い話やな」糸子はニヤリとほくそ笑んだ。
「感動しましたわ!世の中には立派な人もいてはるもんやな~て」
その時、里香が茶を運んできて、糸子の前に湯飲みを置いた。
「お客が先や」糸子に注意され里香は湯飲みを吉岡の前に置いた。
「あんた、はよせな!5分、終わんで?」糸子は里香を見つめる吉岡に言った。
「ちょっと見て頂きたいものがあるんです」吉岡は白い生地を広げた。
「へえ~!オモロイ生地やな」糸子は生地の手触り確認して言った。
すると吉岡は突然、土下座して大きな声を出した。
「助けてください!…僕、間違えてこれ100反も仕入れてしもたんです!」
「はあ!?」糸子の顔が歪んだ。
>また100反かいな…
【NHK カーネーション第129回 感想・レビュー】
昨日に引き続き、随所に『ああ、糸子だなあ』って思う事があります。夏木マリさんは尾野真千子さんの演技を見て研究してるんでしょうね。
さて、ナレーションが若干多いのは晩年編がスタートして2回目なので仕方ないとして新キャラも徐々に増えてきましたね。
金券ショップ屋のお兄さんや生地問屋のひ孫(ひ孫が出てくるて凄い)、京都の呉服屋の跡継ぎ…金券ショップは後々、なんかあるんでしょうね。
不動産←お好み焼き屋←木岡履物店だと思うんですが、木岡夫妻には子供が居なかったんですね。意外だったのが、ほっしゃん北村が大きいメーカーとして大成功していたこと。
安い服専門店みたいな事をいってましたが…しまむら?