「服ちゅうんは着て歩く事でそれに相応しい物事を引き寄せて回るんや。
アンタのその頭とジャージはやっぱり見事にこの結果を連れて来たちゅうこっちゃ」
糸子はケーキを食べながら続ける。
「…世間様と無関係でおられる人間なんか1人もいてへんねや。
自分が世間にどないみえたらこんな目に泡んで済むか…よう考え!
分からんかったらウチに置いとかれてへん、東京帰り」
「バアちゃん!どないや!?だいじょうぶか!?」
不動産屋が心配して店の表から声をかけてきたので糸子は店先に向かった。
翌朝、糸子が朝食の準備をしていると里香が半袖短パンで現れた。
「何やその格好!?セーターでも着んかいな!お母ちゃん、送って来てくれてるやろ?」
「…ママの服着たくない。ママに押し付けられるのもうウンザリだし!」
― 朝食の前に糸子は半纏や毛糸の靴下等を里香に渡した。
「ほなこれ!着い!」
「…誰の?これ…」
「さあ…けど家にあるちゅうことは誰か着てたんやろ…」
糸子は怪訝そうな顔で服を見る里香に構わず朝食を食べはじめた。
>昭和61年正月、初売りの前の日にアホぼんらをウチに呼びました。
「このスーツは着物と一緒でな、こことここを紐で結ぶようにしてあんねん」
糸子は呼びつけた吉岡栄之助と河瀬譲に今回デザインした女性用の服を説明した。
「はあー!」二人は糸子のアイディアに関心する。
「生地もエエよって一着持っといたら長い事着られんで。どや?」
「もの凄い良いです!」
「ほな持って行き。デザイン料はアンタの言てた歩合でええ。
…けど、どないなと頑張って売りつくしや?」糸子はニヤリと笑った。
「はい!ありがとうございます!先生!なんてお礼をいうたらええか…」
「礼やったら譲のひいじいさんに言い!…50年も昔の話をひ孫の友達にまで持ち出されるとは思わんかった。そない立派な人みたいに代々言い伝えらてしもたらそらウチかて格好つけんわけにはいかんやないか?」
「ほな帰りにコイツんとこのお仏壇に手を合わせてから帰ります(笑)」栄之助が言った。
糸子に命じられて里香が2人に茶を持ってくる。
里香は毛糸の帽子を深く被り、半纏を着ていた。
「あれ?この子も先生のお孫さんですか?」譲が里香の顔を見ながら尋ねた。
「里香や…こないだからおったやろ」
「ええ!!?…何かあったんですか!?」
「ふふふ…まあな」糸子は含み笑いをするのだった。
― 優子は糸子との電話でのやり取りの中でわけがわからなくなっていた。
「え?ほんで結局あの子まだジャージ着てるちゅうこと?」
「うーん、どやろうな…」
糸子は掃除をしている里香を見ると下半分だけがジャージだった。
「お母ちゃん言うてたな?ジャージ止めたら話しに行ってええって。どっちなん?」
「なあ浩ちゃん、あれジャージけ?」
糸子は後ろにいた従業員・浩二に尋ねた。
「…ジャージ…ですかねぇ…」浩二は里香の服装を見て首を傾げながら答えた。
「まだジャージ着てる!」糸子は優子に伝えた。
― 夜、里香はロンドンにいる聡子と電話で話をしていた。
里香は着ているジャージが聡子の名前が書いてあることを笑いながら伝えた。
「ふーん、里香、古着着てんけ?やるなあ!そんなセンスあるんやったらうち手伝いに来てよ!ロンドンのオシャレちゅうたら古着やで?」聡子は嬉しそうに里香に言った。
「古着をオシャレで着んの?」
「あとは何着てんの?」
「花の模様のセーターとだれかの靴下…直子って書いてある(笑)」
すると風呂から上がった糸子が里香にたずねてきた
「誰と話てんの?」
「聡子オバちゃん」里香は糸子に受話器を渡した。
>せやけど、そろそろ笑てる場合でもありません。いっぺん、ちゃんと話せんならん
「何が気に食わへんねん?こんな上等な服をこないようさん送ってもうてんのに…」
糸子は優子が送ってきた段ボールの中の服を指して里香に尋ねた。
漫画を読んでいた里香は読むのを辞めた。
「…せっかくエエ高校入れてもろて、何で行かれへんようになんねん?」
「おばあちゃん…ジャージやめたら東京帰らなくていいて言ったじゃん!」
里香はふてくされながら糸子に抗議した。
「東京帰れとは言うてへんやろ?何でやて聞いてるだけやん?」
「…わかんない」
「わからん?」糸子は聞き返した。
「なんか…半年くらい前から急にママが買って来た服もママが選んだ高校も絶対嫌だって思う様になって…ママの顔を見るのもママの声聞くのも思い出すのも嫌!」
「そない嫌いか?」
糸子の質問に里香は首を横に振った。
「…嫌いじゃないけど…どうしても嫌になった…冷たくしたらかわいそうだってわかっているのに…優しく出来ない、どうしても」里香は泣き出してしまう。
糸子は背中をさすりながら優しい口調で里香に伝えた。
「よう、わからんけど…そら、アンタが大人になろうとしてるんやろな」
>さて一方、一日も早よ大人になった方がエエこの人ら(栄之助と譲)はというと
>突然なんやもう1人友達連れてやって来ました
「今日は、お話があってきました!」
「アカン!アカン!面倒臭い話嫌やで~!」
「…なんも面倒くさい話ちゃいますて!凄い話なんです!」譲が言った。
「先生、ものすごいいんです…あのスーツの売れ行きが!
僕、あのスーツに18万の値段をつけたんです」
「18万!?はあ!!」糸子が高額な金額に驚いた。
「それがもう飛ぶ様に売れて、100反分の95着が予約で完売しました!」
「ホンマかいな!?」
「そこで僕ら、お願いに来ました!…先生のブランドを作らせて貰えないでしょうか!?」
三人は一斉に糸子に頭を下げた。
「はあ!?」
譲と栄之助は顔を上げると糸子は固まったままだった。
【NHK カーネーション第133回 感想・レビュー】
なにやらゲンダイネットで書かれていますが、主役が交代してNHKに抗議の電話が結構あるそうです。仕方ありませんが、何だか残念なニュースです。
中には最後まで90歳まで尾野真千子さんで行くべきって言っている人がいるみたいですが、それはそれで何だか違和感があるような気がします(笑)
私的には主役どうこうではなく、内容や展開がちょっと期待はずれな感じです。
今回の里香と優子の確執について『一体何が!?』と思いきや、単なる反抗期のような感じだったり栄之助がいきなり大成功をしたり…。
今日の里香の服装にはちょっと笑いましたが、なんか物足りない週でした。しかも今までで一番タイトルがしっくり来ない週でもありました。
来週から、盛り上がる事を期待してます。