カーネーション あらすじ 『宣言』 第134回(3月12日放送)

「改めまして春光商社の高山守と申します」
メガネをかけたスーツの若い男が糸子に挨拶をした。
「3人目のアホぼんかと思ったら立派な商社の人かいな…」糸子は名刺を見て感心した。

「先生!とにかくあのスーツが凄かったんです!」
栄之助はサンプルを貰って一週間で半分売れてしまった事を説明した。
「お客さんが口を揃えて言いはるのが『とにかくデザインがええ!スマートでオシャレなのに着心地がええ!物凄く楽や!』『こらお年寄りの体を分かってる人がこさえたんやろ』と見抜く人までいはったんですよ~『またこんなんこさえたら持って来てやって』なんべんも僕言われたんです」
栄之助がスーツの評判を伝えると糸子の顔が緩んだ。
「ムフフ。ウチがデザインしたんや!そんじょそこらの婆ちゃん向け商品とはちゃうで」
「そんで僕、そない良い物やったら、もっと広く商売できるんちゃうかな思て、この高山君に話持ちかけたんですよ。こいつの会社はその専門やさかい」
譲は隣に座っている高山の肩を叩いた。
「ウチの会社でもシルバー向けの商品の開発って前々から課題だったんですよ。だから、すぐにサンプルをお借りして営業に回らせてもらったんですけど、残りの半分もすぐ売れちゃって、結局またあの生地を輸入して増産することになったんですよ。お客さんは物凄く欲しがってるんですよ!先生が作られるような服を!」

「そんで僕らな『先生のブランドをこさえるべきや』ちゅうて盛り上がったんですよ」
「人の事に首突っ込んどらんと自分の店繁盛させんかいな」
しっかり絡んで商売させてもらうつもりだと譲は答えた。
「生地屋と呉服屋ですから」栄之助が笑った。
すると譲は急に真顔になり母親を1年前に亡くしてからやっと本気になったことを伝えた。
「生地屋も勉強して新しい商売を見つけていかなあかんな思いましてね…やっぱし攻撃は最大の防御ですから」
「え?なんやて」糸子は譲が言った意味を理解できなかった。
「…攻撃するということは一番の守りになるということです」
「おもろいこというな(笑)」
「…いや、僕考えたんちゃいますけど…」

「どうでしょう先生?」栄之助が糸子に再度ブランドの決断を迫る。
「うーん…やっぱし、アレやな…鰻とろか?」
糸子が里香に特上鰻4人前の注文を指示したので譲達は喜んだ。
「まあ…話はようわかった。しっかりしたエエ考えやと思う。
スジもようとうってるアンタらがウチが思てたほどアホちゃうこともようわかった。
けど…これは申し訳ないけどこっちの話でな…ウチはやっぱしオーダーメード職人なんや」
50年前の看板を立ち上げてから何度も既製服に転向する事を考えたと3人に説明した。
「けど、ある時決めたんや…ウチは一生オーダーメードだけでやっていくちゅう」
「…何で、そない決めたんですか?」譲が不思議そうに質問した。
「…意地やな。最後の1人になったかてウチはオーダーメード職人として意地見せ続けちゃるってそない思たんや…」糸子は、そう言うとお茶を飲んだ。
すると商社に勤める高山が声を発した。
「えー!?見せなくてイイんじゃないっスかぁ?意地なんか」
「そうですよ~先生見せてるつもりでも誰も見てませんて(笑)」譲も高山に賛同する。
「ほんなもんチャッチャと捨ててしもて僕らと新しいブランドこさえましょ」と栄之助。
「…お…お前ら…50年のウチの意地、わからへんけ?」糸子の声が震える。
「わかりません」3人は即答した。
「…里香!さっきの鰻キャンセルや!!こいつらに鰻なんぞ食わさんでええ!」

― 譲達3人は2人前のうな重を食べさせてもらう。
「美味ぁ~!!ホンマ名店ですね~近所にあるんですか?」栄之助が糸子に尋ねた。
「喋らんと早よ食べて早よ帰り!」鰻を食べながら糸子は不機嫌そうに答えた。
そして食べ終わった3人を早々に糸子は店から追い出すのだった。
「…けど先生、万が一気が変わらはったら…」
「変わらん!!絶対変わらへん言うてるやろ!」
引き返してきた栄之助に糸子はおはじきを投げつけた。

「…この頃の男どもはヌルヌルしよってからに…もう!(怒)」
「ただいま~ウフフフ。はい先生。そこで坊ちゃんらに預かりました」
店に帰った孝枝が糸子に封筒を手渡した。
糸子が封筒を開けると中には『でも信じてます(ハート) 譲&栄之助』と書かれたハート型の手紙が出てきた。
「きぃー!!!!」糸子は紙を丸めてゴミ箱へ投げた。
>ほんでも、ウチのデザインが外でそんなけ通用したちゅう事
>若い子らがあない熱心に商売に誘ってくれた事
>じんわりと嬉して…気持ちにも張りが出るちゅうもんです。
糸子はくしゃくしゃに捨てた紙をゴミ箱からとり出した。

「18万のスーツが95着!凄いな…シルバー世代て穴場なんやなあ。ウチもやろうかな~」
糸子との電話で直子が感心した。
「アホか。にわか仕込みでやったかてウチみたいにいかへんで?」糸子がほくそ笑んだ。
「そらそやな…ウチ50代以上の体型なんか何もわからんわ…」
「悪いけどウチは知り尽くしてんや。年寄りの服の着せ方見せ方売り方」
「…なるほどな。小原糸子でシルバー向けブランドぶち上げる…そのアホぼんらも目のつけどころはごっついエエけどな…お母ちゃん、やめときや。プレタちゅうんはホンマに大変な仕事やさかい、お母ちゃんの年では無理やで?」直子が忠告した。
「わかってるわ!プレタなんてやる気ないわ。オーダーメードの職人やさかいな!」
「ほんならええけど…」
「こんなアホ言うて来た子がおったちゅうそれだけの話や!」
糸子は苛立ちながら受話器を置いた。

― 夕食を食べ終えた糸子は、里香に後片付けをするように言った。
「…今日はおばあちゃんじゃん」里香が反論した。
「ウチは今日はいつもよりくたびれてるやろ?見てわからへんか?
あんたも若いんやさかい『ウチが代わるで』くらい言わんかいな…さ!風呂入ろう!」
>はあ~難しなあ…年寄りちゅうんは…ホンマは年寄りかて機嫌ようしてたい
>せやけど体がそれを許さん…痛い膝、痛い腰…
糸子は辛そうに階段を昇った。
「…重たい体やな……あ!!」
掴んでいた手すりから手を滑らせてしまい糸子は階段を踏み外してしまう。
ドドドド!!糸子が階段から転げ落ちる音がしたので里香は慌てて階段に向かった。
「おばあちゃん!!おばあちゃん!!」
「ああ…うう…ゴホゴホ」糸子は苦悶の表情を浮かべていた。


【NHK カーネーション第134回 感想・レビュー】

栄之助の能天気さが、ちょっと面白かったです。
「ほんなもん、ちゃっちゃと捨てて」て…あの言い方。
それより週が変わってようやく主役の夏木マリさんに慣れました。
鰻をキャンセルと言いつつ、食べさせる…でも3人の所2人前というところに変な愛を感じます。栄之助や譲も糸子を恐れていたはずなのに、突然ハートの手紙とか前もって準備していたところが、お茶目です。
先週は糸子と周りの距離がありすぎて違和感があったのかもしれませんね。
ジャージを辞めて四六時中、半纏を着てる里香に好感が持てました(笑)