泣いて泣いて泣きまくったら、やっと涙が止まったさかい家に帰ることにしました。
糸子がトボトボと家に帰ると祖母・ハルに沢山の布団をかけられて寝る事になった。
「暑い…重たい…」糸子は苦しそうに祖母・ハルに訴えた。
「我慢し!風邪はな冷やしたらあかんやし!」
辞めたいなぁ…店…辞めて女学校戻りたいなぁ
あぁ…ウチは、なんちゅうアホな事したんやろ…
そう思いながらいつの間にか糸子は眠ってしまうのだった。
隣の部屋で妹の静子が母・千代に着物をねだっている会話で糸子は目を覚ました。
「アカン。あんな贅沢な着物、アンタだけに買われへん。清子かて光子かておさがりで我慢してやんのに」千代が静子をなだめた。
「…ええなぁ糸子姉ちゃんは。糸子姉ちゃんばっかし新しい着物着れるし、…学校辞めたいっちゅうたら辞めさしてもろうて働きたいちゅうたら働かせてもろて…」
静子が面白くなさそうに言った。
「そない羨ましいならアンタも姉ちゃん見習うたらよろし。こないな所でお母ちゃんにグジュグジュ言わんと、自分でお父ちゃんに着物買うてくださいって頭下げておいで」
「…そんなことをようせん」
「好きな事をするちゅうんはな、見てる程、楽とちゃうんやで?女は余計や。大変なんや。
姉ちゃんは偉いやん!やりたいことあったら全部自分でどないかしよる。どんだけしんどうても音ぇを上げへん!ええなあ思うんやったら何ぼでも真似しい。
けど真似でけんと文句だけ言うんはあきません!」
偉いやて…姉ちゃんは偉いやて。
隣の会話が耳に入った糸子は自分が褒められたことで嬉しくなった。
糸子は体調が良くなったので夕食を食べることにした。
「店、明日もう一日休ませて貰うか?お母ちゃん言いに行ったるさかい」千代が尋ねた。
「ううん。明日はもう行ける」糸子は千代にニッコリした顔で言った。
「…勉強やで。勉強しに行くと思え」父・善作が再び小言のように言った。
「そやな。…ホンマやな、お父ちゃん!…勉強やと思っていったらええんやな?」
「なに初めて聞いたような顔して言うとんねん…」
「そやけどホンマ初めて聞いたような気ぃするわ!」糸子の表情はさらに明るくなった。
「はぁ~!?何いっとんじゃお前は!」善作は口に物が入ったまま糸子を叱った。
― 翌朝、糸子は桝谷パッチ店でいつも通り誰も来ていない時間から店の準備を始めた。
それまで雑用を嫌々していた糸子は、楽しそうに窓を開け、作業台を拭いた。
窓を開けたら朝の風が入って空気が入れ替わるんやな。
こんなして机が綺麗に拭かれておったら気持ちがええんやな。
「おろ!風邪もうええんけ?」
昨日、居ない方が進むと糸子に言った作業員・岡村が出勤してきた。
「へい元気になりました」糸子は元気良く答えた。
「そうけ…せや!飴やろ!」
怖い人が飴くれることもあるんやな。
縦に拭いて横に拭いたら汚れが残らへん。
お茶は少し待ってちょっとずつ入れたらおいしなる。
その気になったら勉強できることは山程あるんや!よし!もうこんだけ知恵ついた。
糸子は学んだ事を記しているノートを見ながらそう思って嬉しくなった。
知恵ちゅうんは増えていく物ばっかしもんやし
10年っちゅうのは減っていくばっかしのもんや。
…あと9年と369日…大丈夫や、ウチはちゃんとミシンに近づいてる。
― 糸子は誰も桝谷パッチ店に出勤していない早朝からミシンを幸せそうにに磨いていた。
「ごっつ嬉しそうに磨くの?」桝谷パッチ店の店主・桝谷幸吉が声をかけてきた。
「へい!そらミシン大好きですさかい!」糸子が笑顔で言った。
「ええこと教えてたろか?そいつはな、夜になったら遊んでんで」幸吉はドヤ顔をした。
「…へ?誰と遊んでんですか?」糸子は意味が判らず幸吉に尋ねた。
「いや違うがな!…遊んでるって別にこいつが誰かと“おしくら饅頭”している訳やないよ。誰も使わんのを遊んでるちゅうんや。遊んでるもんを使わせてもろかて誰も怒らえんで?」
「…え!?え!?皆が帰った後やったら練習さしてもろてもええちゅうこと!?」
糸子は幸吉が言わんとしている事がわかると興奮した。
同時に山口が(奈津が店に来た日)糸子を早く帰らせた理由がわかった。
「山口さん!終わってからでええよってミシン使わせてください!」
― その日の夜、糸子を帰らせようとしていた山口の手から手ぬぐいが落ちた。
「…お前、もう大将からお許し出たんけ?」山口は驚いた表情で糸子を見た。
「へい。夜はミシン使うてええって言われました」
「何じゃそりゃ!ワシなんかミシンさわんのに1年かかったんじゃぞ!
なんでお前は二ヶ月やねん!かぁ~むかつくのぅ~」山口は悔しそうに言った。
ミシンの練習が終わると山口は帰っていった。
糸子はミシンの前に座り、しばらくミシンを嬉しそうに眺めていた。
優しく撫でながら糸子はミシンに小さな声で話しかけた。
「おおきにな…待っててくれて。ふふ…そやけど…案外早かったわ…」
それから糸子は自分の着ている着物をミシン台に乗せ縫う真似をした。
「今日、大将に言われたとこやさかい縫うもんないねん…明日から山ほど布持って来るわ。
あとお婆ちゃんに夜用の“オニギリ”こさえてもらうわ。なんぼ遅そなってもええように」
「よろしゅうなぁ…」
糸子はミシンを両手で抱きかかえながら幸せそうな表情を浮かべた。
【NHK カーネーション第15回 感想・レビュー】
今更な説明ですが当ブログでは、ピンクの文字は糸子のナレーションです。“糸子のナレーション”でとか書くの面倒なので・・・・手抜きでごめんなさい。
さて、糸子の試練からの脱出・・・糸子の言うように本当に“案外早かったわ”です。
大将、ちゃんと糸子の事をみてたみたいで、あ~良かった。昨日は大将の嫁も糸子に「早よ食べ!」みたいに怒っていたシーンがあったので騙された!?って思ってたんですけどね。
善作と千代の言葉でポジティブシンキングになった糸子、やっと運が回ってきました。
話がいい方向に向かっていると気分良くなる自分は単純だとつくづく思います(笑)