カーネーション 『あこがれ』 第3話(10月5日放送)

「なんや嬢ちゃん、どないしたんや?」
二人の男性客が吉田屋の入り口の脇でうずくまっていた糸子に声をかけた。
「お金払うの待ってますねん…」
糸子はそう言うと集金できなかったら晩御飯を抜かれてしまうと泣き真似をした。
「おい!大将!」二人の男性客は吉田屋の主人を大声で呼んだ。

店の主人、吉田克一がニコニコして男性客達を案内しようと玄関にやってきた。
「大将、なんぼか知らんけど払うてやりぃよ!」男性客たちは克一に言った。
「え?…なんやさっき来た子やんか…明日払うって言うたやんか?」
商売の邪魔になってかなんと克一は糸子に裏口に回るように言った。

― 「へい!たしかに!」糸子は吉田屋の裏口で貰った金を数えて言った。。
「お父ちゃんよりよっぽど商売上手やな…」奈津の母・志津が恨めしそうに言った。
「おおきに!」糸子は全く気にせず上機嫌だった。

糸子の父・善作は吉田屋から離れた橋のたもとで糸子を待っていた。
「お父ちゃん!払てもろたでー!」糸子は走りながら大声で伝えた。
「ホンマけ!?でかした!糸子!ようやったで!!」
「うん!ウチようやった!!」糸子は走ってきた勢いそのままに善助に抱きついた。
「なんやお前、まだ赤ん坊のつもりかえ?もうこんな大きゅうなってんのに」

すっかり暗くなり、糸子は買ってもらった饅頭を食べながら善作の横を歩いていた。
「ホンマ、お前が男の子やったらどんだけオモロかったやろのぅ…お前が息子だったら、そら着物の事も商売の事もワシが一から十まで仕込んでじゃったで!
お前くらいの頭と根性があったら、あっと言う間にいっぱしの商売人になれる!」
そして二人で小原呉服店を岸和田一にすることができなのにと善作は残念がった。
「女かてできるで!女かて商売になれる!」糸子が言った。
「アホ抜かせ!女はいいとこに嫁に行って婿さんにあんじょう仕える、それが一番じゃい!」「なんでや!なんで女はそんなオモロないねん!」しかし善作は答えなかった。

― 大正14年(1925年)正月、糸子達三姉妹と母・千代は神戸にある千代の実家を訪れた。
「はっは!来ましたか!豪華娘が!」千代の父・清三郎と母・貞子が糸子を出迎えた。
糸子の母方の祖父・清三郎は神戸に住む金持ちで糸子達は目の前に出された豪華なおせち料理を食べるのに必死になった。

「ちゃんと食べさせてやっとんのか?」
別室で清三郎は糸子達の前で見せる顔とは異なった険しい顔で千代に質問した。
「食べさせてます」
「あんな栗栗いうてんやんか?」
「やっぱり可愛らしいな女の子は。孫は男ばっかりやろ?着物でもなんでもそっけのうて…
はい。お前も甘いものでもお食べ」そう言って貞子は娘の千代にチョコレートを出した。
「わぁ!チョコレート!嬉しい!」千代は子供のように喜んだ。
「…それで今度はなんぼ貸してほしいんや?」清三郎は千代に質問した。
「え?…あの…30円ばかし…都合つけてもろうたら…」言いづらそうに千代が言った。
「そもそもや…なんでお前が借りに来るのや?金の事や。善作君がくるのが筋やろ?」
「どうも商売の方が忙しくて…」
「ハッ!繁盛もしてないのにどない忙しいねん!お前がボケーとしているから旦那がつけあがるんや!そもそもお前とあの男との結婚なんぞ許した覚えはないんやぞ!」
「ハハハ!今更そんな!」貞子が可笑しそうに笑った。
「今更もへったくりもない!わしは断じて反対やった。あんな貧相な呉服屋の番頭に誰が好き好んで大事な娘をくれてやんねん!あんな駆け落ちみたいな真似せんかったらお前もこんな金の苦労せんでよかったんだろうが!」

「駆け落ちって何?」糸子が食べながら不思議そうな顔で部屋に入って来た。
「あら!何でもないんよ?」貞子が糸子に言った。
「どうだ?お腹いっぱいお食べになりましたか?」清三郎もごまかした。
「食べた!美味しかった!」
「おい!勇!糸子になんか面白いもんみせてやりぃ!」千代の兄・正一が廊下で本を読んでいた息子・勇を呼び糸子を部屋から出した。

勇がタイタニックの模型や地球儀を糸子に説明するも糸子はつまらなそうに部屋中をウロウロ歩き回り部屋にある色々な物を物色していた。そしてキャビネットの中にあった人形を見た。「あ!何これ!?綺麗…触ってもええ?」
糸子はキャビネットを開けドレスを着た人形を手に取ってみた。
「うわー綺麗な着物やな~」
「そんなんが好きなん?…ついといで!もっとええもん見せてやるわ!」
勇は糸子を外に連れ出し、とある洋風の建物の中に連れて行った。
扉を開け、部屋を糸子に見せるとそこは外国人が大勢いるパーティ会場だった。
糸子はダンスしている女性のドレス衣装に目が釘付けになった。

外国人達と目があったので勇は逃げ出した。
しかし、振り返ると糸子が部屋に入っていったので、恐る恐る中を覗いてみた。
すると糸子は、外国人の女性と楽しそうにダンスしていた。
勇もみつかりダンスをすることに。
いつしかダンス会場は糸子と勇を中心に輪になっているのだった。


【NHK カーネーション第3話 感想・レビュー】

おひさまの陽子は『末っ子いい子』だったのに対し、カーネーションの糸子は『長女で頭の回転が速いおてんば』ってのが対照的で面白いです。
これまた祖父と祖母の人間性がいいですね~。
自分の娘・千代に甘い祖母・貞子と孫に甘い祖父・清三郎が笑えます。

今日は祖父祖母と従兄弟・勇、叔父・正一など新キャラが多数出てきましたね。
勇役の子も相当演技が上手でした。
「ホンマはママにきかんとあかんかもしれへんけど…」って徐々に声が小さくなるところ。
なに?あれ誰か指導とかしてるのかな?無茶苦茶、リアルじゃないですか(笑)
「おひさま」の時も母方の祖父は金持ちという家計に陽子も生まれてましたが、この設定、流行っているんでしょうかね?
まだ3話ですが、本当に面白いドラマになるじゃないでしょうか?