登校中、いつものように男子生徒にからかわれるが糸子の頭の中は『なんで女に産まれてしもうたんやろ?』という思いで一杯で相手をする気にもなれなくなっていた。
― 授業中、吉田奈津が生徒の前で朗読をしていた。朗読している教科書の内容は『女性と男性は体の構造も役割も違い、女性は女性らしく男性を助けるように努める』といったものだった。日頃から糸子の女性としての振る舞いや考え方を考え男性教師は続きを糸子に朗読するように言った。そして糸子の朗読が終わると教師は奈津に質問した。
「吉田さんはどうですか?女子の勤めはできますか?」
「はい。できます」奈津は自信満々に返事をした。
「小原さんは女子の勤めはできますか?」教師は今度は糸子に尋ねた。
「……」糸子は返事をせずにいたので教師が詰め寄った。
すると何とか気を逸らそうと勘助はわざと椅子から転げ落ちた
「何をしてるんや?」見事に勘助は教師の注意を引く事に成功するのだった。
下校途中、神社に寄り倉庫の中の“だんじり”を糸子は昇ろうとした。
「誰じゃ!?…なんや糸ちゃんか」勘助の兄・泰蔵が倉庫に入ってきた。
「だんじり…乗りたいんや…」糸子が泰蔵に言った。
泰蔵は表に誰もいないことを確認すると扉をしめ「乗れ」と糸子に言った。
梯子を昇り糸子はだんじりの屋根に登った。
そしてしばらくじっと遠くを見ていたが糸子の表情は明るくなる事はなかった。
「降りる…おおきに」糸子は無表情で泰蔵に礼を言った。
「…気、すんだか?」泰蔵は尋ねたが糸子は首を横に振り、何も言わず帰っていった。
― 料亭吉田屋に奈津の伯母が泣きながら奈津の母・志津に訴えていた。
「離縁や!離縁しちゃる!」
「あんなぁ男っちゅうもんはそんなもんやねん。あんただけとちゃう」
「嫌や!何で女ばかり我慢せなあかんのや!ここ見てや!こんなに腫れてるんやで?」
奈津の父・克一は志津を廊下に呼び、早く帰ってもらうように言った。
部屋に残った叔母は奈津に声をかけた。
「なっちゃん…結婚なんかな?するもんやあらへんのやで?女ばっかり損するんやから」
「今日、修身で習うととこや。女子は男子をよう助けて仲ようしたら家も富も栄えるって」
「仲良うできたらな…せやけど、そんな簡単に仲ようできひんもんやで?」
「なんで?」奈津は哀れむこともなく煎餅を食べながら尋ねた。
「なんでって…なんでやろ…?」
― 糸子は二階の自分の部屋で横になっていた。3人の妹達は各々絵を描いたりしていたが糸子だけ動かなかった。そんな糸子を心配そうに階段から覗いていた善作が千代に尋ねた。
「おい!なんで糸子は外へ遊びにいかへんのや!?」
「は?」突然の質問に千代は聞き返した。
「いつも帰って来たらびゃって!飛び出して行くやないかい!?なんで二階でへばってんのや!こんな天気もええのに…ワイにしばかれてしょぼくれてんのちゃうか…?」
善作はガックリと肩を落とした。
「あぁ!そうですわきっと(笑)」千代は明るい声で答えた。
「何?ちょっ!ちょっと待て!そうですわはないやろ!?そもそもな・・・!」
善作はたまらず千代に説教をはじめるのだった。
二階の糸子は相変わらず横になりながら考えていた。
『なんで女に生まれてきたんやろ?女は男より弱わてだんじりも引かれへん。
やりたい仕事もなーんもでけへん。女が大人になったら年がら年中家おって、一日男に叱られて…それが済んだら台所でイワシばっかり炊くんや。
嫌や~、しょうもなさ過ぎる…女なんかホンマ嫌や!
なんかオモロいこと考えよか?オモロくて楽しなってくるようなこと!』
そういうと糸子は起き上がり絵を描いていた妹に声をかけた。
「姉ちゃんがええもん描いちゃるわ!」そういうと糸子は紙にドレスの絵を描いた。
「シャーってなっててな、ヒヨヒよってなってんねん。ドレムって言うんやで!
ホンマはもっときれかったんやけどな…」糸子は残念そうに言った。
「ふーん…」妹達は姉の描いた絵を見て興味なさそうに返事をした。
すると糸子宛に神戸の祖母・貞子から糸子宛に荷物が届く。
届いた荷物の紐を解いて袋を開けると中から赤い箱が姿を現した。
「うわー綺麗な箱やー!おばあちゃん箱くれたー!ピカピカやー!嬉しいな!何、入れて使おうかな?…ん?…なんか入ってる」糸子は箱の中に入っていたものを取り出した。
「糸子?箱ちゃうんやん…洋服やて。外国のお客さんから頂いたんやけどおばあちゃんの所には男の子しかおらんからウチで着なさいやて」添えられていた手紙を読んだ千代が言った。
「うわーい!どれむや!どれむ!どれむや!!」洋服を持って糸子が部屋を飛び回った。
「どれむ!?ドレスのこと!?」千代がはしゃいでいる糸子に尋ねた。
糸子は早速、ドレスを父・善作と祖母・ハルに嬉しそうに見せた。ハルはドレスを着て見せてくれと提案したが糸子にはサイズが合わず、次女・妹の静子が着ることになってしまう。
「リボン付けたらお人形さんみたいや~」静子を見ながら千代は嬉しそうに言った。
「ウチかて着れる!!」面白くなさそうに糸子が言った。
「入らんもんは入らへんの。しゃーないやんか?無理したら破けてしまうやろ?」
『だんじりと一緒や…手に入りそうで入らへん!ほんでもよう考えたら、一個だけだんじりとちゃうのんは…女のウチにもいつかは手に入るかもしれへんちゅうところこです』
つまらなそうにしていた糸子は、部屋に飾った洋服をみて笑顔になるのだった。
【NHK カーネーション第5話 感想・レビュー】
うーん、面白いです…内容も笑いも雰囲気も私はとっても好きですねぇ。
サイズが合わないっていう展開が前回の連ドラ『おひさま』と違うところですね。
ドレスの凄さを絵を使って糸子が説明するんですが、本当に興味なさそうに「ふーん」って三姉妹が答えるところなんて最高です。
糸子もそれでも構わないってスタンスがリアルに子供っぽくて良いです。
世間では芦田 愛菜ちゃんが天才子役としてブレイクしましたが、私としては同じくドラマ『マルモのおきて』に出ていた子役の福君や今の糸子役の子(二宮星)も負けず劣らず凄いと思うのですが…いかがでしょうか?
ちなみに10月9日(日)『マルモのおきて』のスペシャルがあるみたいです。