― 神戸 松坂邸
「うわー!ごっつええミシン!」糸子は用意されたミシンに驚いた。
「さっきおじいちゃんのとこの会社の人が運んで来てくれてんで」
祖母・貞子は嬉しそうに糸子に説明した。
「お寝巻きやらは一通り揃えておいたけど他に必要なもんがあったら何でも言いや」
「おおきに、お祖母ちゃん。ほな早速仕事させてもらうわ」糸子は準備を始めた。
「はあ?もう仕事するんかいの?一緒にココア飲もうなあ」
「いや、急がなアカンよって。堪忍」
貞子は仕方なく楽しもうと用意させた孫とのカステラとココアを諦めた。
―夜、ミシンで仕事をしている糸子の元に帰宅した祖父・清三郎が現れた。
「よう来たな。どないやこのミシン?」
「おかえりお祖父ちゃん。ごっつええわ。ホンマおおきに」
「そうそうか。もうちょっとしたら晩ご飯や。がんばりや」
清三郎は糸子が来た事が嬉しく、しばらく仕事の様子を見ていた。
―夕食時、松坂家がテーブルを囲んで洋食を食べていた。
「それで慌ててな使うてないミシンが探させたんや。いやそしたら案外これが全部使うとってな(笑)」清三郎が糸子のために用意したミシンについて話した。
「えーそれでどないしたん?」祖母・貞子が尋ねた。
「しょうがないから“社長命令”で通したがな『とにかく一大事やから誰かのミシン開けてくれ』って言うてな(笑)」
清三郎の会社で働いている糸子の叔父・正一が楽しそうに補足した。
「おじいちゃんズルイわ。僕が車貸して言うた時は会社の人に貸してもうたくせに(笑)」
従兄弟の勇が清三郎に笑いながら言った。
>おじいちゃんのとこの晩ご飯が美味しくて楽しければ楽しい程家の事が気になりました。
>お母ちゃん、大丈夫やろか?
糸子は家の事、母の事が心配になっていた。
「なんや糸子、元気ないのとちゃうか?」清三郎が糸子に尋ねた。
「ううん」糸子は慌てて笑顔を作りクビを振った。
「仕事の事で頭いっぱいやねんで。おじいちゃんそっくり(笑)」貞子が言った。
するとメイドが糸子に妹の静子から電話がかかってきたと報告しにきた。
電話に出ると静子は早く帰ってくるように姉に訴えてきた。
糸子はわけがわからなかったが静子は事情を説明し始めた。
― 糸子が神戸に出発した後
善作は糸子が神戸に行った事を知り、妻・千代に激怒した。
しかし祖母・ハルが善作と千代の間に割って入る。
「千代殴るんやったら先うちを殴れ!うちが『行け』ちゅうた!」
3人の妹達も母・千代を庇ったのを見て善作は何も言わず部屋を去る。
その後、店中の反物と一緒に善作はどこかへ行ってしまうのだった。
「おーい!帰ったぞ!ハッハッハ!」
上機嫌で善作は夕食の時間に帰って来て木之元栄作と共にミシンを店に運び入れた。
「うわー!ミシンや!」妹達は突然のミシンの登場を喜んだ。
「あんたこれどないしたんや!?」祖母・ハルがびっくりして尋ねた。
「買うたに決まっちゃらし(笑)いっちゃん目立つ所に置いたんど!(笑)」
善作はそう言うと店で目立つ場所にミシンを置いた。
千代はそんな善作の行動に感動して涙目になってしまう。
「帰るわ!明日の朝一番の電車で帰るよって。言うちょってお父ちゃんに『糸子はすぐ帰って来ます』って」糸子は妹に電話で伝えた。
その会話をコッソリ聞いていた清三郎と貞子は落ち込んでしまう。
― 翌朝、朝食をとりながらため息をつく貞子に糸子は謝った。
「ごめんな…」糸子は申し訳なさそうに言うが貞子は泣いてしまう。
「泣かんで。ええやん…」糸子は困り果ててしまう。
「泣かんでええ…だが、これが泣かずにおられるか(泣)」
清三郎と貞子は泣いてしまい、孫が帰るのをお互いの手を握りながら慰めあった。
叔父・正一は玄関に待たせていた車に糸子を乗せた。
「気ぃつけたな」
「お祖父ちゃんらに『また来るよって元気出してな』って言うとって」
糸子は車の窓を開けて正一に頼んだ。
「言うとく。おじいちゃんらもお前の事が好き好きでたまらんのや。またおいで」
「おおきに」糸子を乗せた車は走り出した。
小原呉服店に帰ると立派なミシンが店の一番目立つ場所に置いてあった。
糸子はそれまで沢山あった反物が入った棚が空になっていることを確認した。
ホンマに空っぽや…こない反物売ってもうて店はどないなるやろ?
「なんやお前、帰っちゃったんか?」父・善作が現れ普段どおり話しかけてきた。
「…お父ちゃん!ミシン、ホンマおおきに!」糸子は頭を下げた。
「……何をボサっとしてんねや。早うせな仕事間に合わんぞ!?」
それから糸子はミシンを使って心斎橋百貨店の制服を作った。
また善作の提案で妹達や祖母、母も店で堂々と手伝いを行うようになった。
「うちとこ、洋裁も始めましてん。こっちもごひいきにお願いします」
店に来てミシンを見て驚く客に対して善作は笑顔で言うのだった
昭和8年、1月1日、納品日の前日に心斎橋百貨店制服20着は無事似完成した。
糸子は翌日の1月2日の納品日に勘助と共に心斎橋に向かう。
百貨店に到着した糸子と勘助だったが勘助が「俺は外で待っとるさかい!」と言い出す。
勘助を玄関に待たせ、糸子は百貨店の中へ。
支配人の部屋へ向かう階段を昇りながら糸子は緊張していた。
20着…無事に納められるやろうか?皆の苦労は報われるやろか?
【NHK カーネーション第28回 感想・レビュー】
いやー『カーネーション』を今まで28回見てきて初めて涙出そうになりましたわ。
善作が主人公ではないので彼がどう思考しているかを詳しく知る事はできませんが『店中の反物を売り払ってでもミシンを買ってやりたい』という娘への気持ちが『見栄』から来ているところが本当に人間らしくて好きです(笑)。
で、意地っ張りなので、糸子が翌日帰って来ても知らん顔するあたり、不器用な父親です。
かわいそうなのはお祖父ちゃんとお祖母ちゃんです。
あんなに楽しみにしていたのに…最後の朝食はもうお通夜です(笑)
ミシンが来て無事納品ってすんなりいくかと思ったのですが、なにかあるんでしょうかね?
勘助が百貨店に入るのを頑なに拒んだ理由も気になります。
ただ単に百貨店にびびっただけ?