「糸子!糸子!ほらあんたもな、はよ着替え!」
祖母・ハルがゴロゴロしていた糸子に喪服に着替えるように言った。
「…うちは行けへん、奈津にはその方がええねん…」
「何をわけのわからん事を言うてんねん」
糸子は父・善作に連れられて吉田奈津の父・克一の通夜に行く。
入れ違いに出てきた安岡勘助を糸子はつかまえて質問した。
「うち入ってええと思う?奈津嫌がるんとちゃうか?」
「…せやけどまあ、しょうがないでこればっかしは」勘助が答えた。
「奈津、泣いちゃった?」
「いや泣いてはなかったけどな」
「うち逃げちゃろかな…」
「糸子、何してんねん!」善作が糸子を大声で来るように呼んだ。
糸子は奈津の視線を感じつつ、なくなった克一のご焼香をする。
ごめんな奈津、来てしもうて…お顔拝んだらとっと帰るよってな
紳士服のロイヤルは、サエの注文を受けてから客が殺到するようになっていた。
川本の行った通り、サエのドレスを見た踊り子が一斉に店に押し寄せて来たのだ。
踊り子は一日も早くドレスで踊りたいと糸子に注文をつけていた。
「ええか1着、3日でこさええ!」ロイヤル店主は糸子に命じた。
「3日?そら無茶です!」糸子が反論した。
「あない客がみんな急いでんや!」
「けどあんまし慌てても仕事が雑になります」
「かまへんわい!どうせダンスホールで踊り子が着るようなもんや!さっさと作ってとっとと売ったった方がええんじゃい。
そらな背広はキチッとこさえなならんど?洋服屋屋はええ背広をこさえてなんぼやさかいな。けどドレスみたいなもん女子供が遊びで着る服や、ちゃっちゃとやれ!メリハリつけ!
店主がドレスを馬鹿にして服の中で背広が一番偉いと思っている事に糸子は腹が立った。
しかし一方で客の糸子は客の要望には応えたいと思っていた。
そこで糸子はお客さんの体に直接布を当てて裁断する方法をあみだす。
型紙を作るという手間が省け、その分早く仕上げる事ができるようになるのだった。
「いやーごっつええわ!おおきに」女性客は鏡に映ったドレス姿を見て大満足の様子。
大丈夫や。よし!この方法はいけんで!!糸子は新しい手法に手ごたえを感じた。
「その調子や」客を見送ったロイヤルの店主がニッコリしながら糸子に言った。
「はい」大将はうちが言われた通り手抜いてる思て上機嫌でした。
手間は省いたけど手ぇは抜いてへんよってな!
糸子はお金の勘定を嬉しそうにしている店主に向かって変な顔をした。
「すんません。ミシン使わせてもうてええですか?」
女性客のドレスを縫うため、糸子は手縫いをしていた職人に尋ねた。
「見てわからんのか?使てるやろ?」職人は鬱陶しそうな声で糸子に言った。
「…いやけど今、それやってるやないですか?」
「またすぐつかうんじゃ!」
川本が糸子を手招きして自分のミシンを譲ろうとした。
「川本!お前はさっさと自分の仕事仕上げんかい!女が玩具作んのに譲ってる場合け!」
オ~モ~チャ~?ドレスの事をオモチャて言いましたぁ~!?(怒)
「大将!!うちのミシンで縫うて来ます!ほな!」
ドレスを馬鹿にされ頭にきた糸子は勢い良く布を持って店を出た。
小原呉服店のミシンを使って糸子がドレスを作っていると芸妓の駒子がやってきた。
久しぶりの再会に糸子は喜んだ。
吉田屋に出入りする駒子は若女将である奈津が案外ケロっと元気だと糸子に教えた。
「相変わらずツンツンしてるしズケズケもの言うし…あれは心配いらんわ」
だんじり祭当日、糸子は駒子から聞いた事を思い返していた。
奈津のアホ、何強がってんよ。何を一人で我慢してんよ。
泣かなアカン、堪えたアカン…
うちが泣かしちゃる!ケンカでもなんでも吹っかけて泣かしちゃるよって。
糸子が二階のベランダから祭で賑わう人通りを眺めていると八重子が慌てている姿が目に入る。八重子は糸子に息子の太郎がいなくなってしまっと伝えた。
糸子は急いで太郎を探しに店を出て行く。
お得意さんに挨拶をしに川原を歩いていた奈津は小さい子供を見つける。
「こら。そっち行ったアカン」
奈津は子供が川に入ったら大変と手を引いた。
「あれ?あんたどこの子やったっけ?まあ、ええわ。おいで」
すると安岡泰蔵が走って奈津の前にやってきた。
「おおきに…」太郎を抱きかかえると泰蔵は奈津に礼を言った。
奈津は思いがけない(初恋相手の)泰蔵の登場に動揺する。
「…大変やったな…おやっさん…」泰蔵が奈津に言った。
「うちの事…知っちゃったん?」奈津は驚いた。
「吉田屋の奈っちゃんやろ?」
コクリ…奈津は目を丸くしながら頷いた。
「ほな…」動揺した奈津は小さく言うと歩き出した。
「ホンマ、おおきにな!」泰蔵は大きな声で歩いていく奈津に礼を言った。
奈津は振り返り軽く会釈をして再び足早に歩いていった。
【NHK カーネーション第37回 感想・レビュー】
ロイヤル、駒子に2ヶ月先まで予定が埋まってるって言ってましたが…すごい繁盛振りですね?
洋裁屋は夏をどう乗り越えるかという問題をクリアした店主が笑いが止まらないも頷けますが稼ぎ頭になった糸子に対して他の職人も扱いが雑すぎ(笑)。まあ、職人に関して言えば嫉妬もすこし在るのかな?
糸子より奈津のほうにスポットライトが当たってましたが、奈津の糸子を睨む顔、凄かったです。
勝手な解釈ですが奈津は『容姿も家庭環境も恵まれている』ハズなのに泰蔵と仲良かったり、自由に生きてるように見える糸子が妬ましかったりするんでしょうね。思い込み的な劣等感?
でも泰蔵兄ちゃんと初めて会話して『奈っちゃん』とか呼ばれ“キョトン”してた表情がえらい可愛らしく、いつものツンケンした表情とのギャップがあって、すごい女優さんだな~って改めて思いました。