小原洋裁店で糸子が仕事をしていると祖父・松坂清三郎が現れた。
「おじいちゃん!!」糸子は思いがけない来客に驚いた。
「おう!こらまたここの店主はエライ別嬪やなぁ~ハハハ」
「おおきに(笑)神戸からきてくれたんけ?」糸子は祖父の突然の訪問が嬉しかった。
「ああ。」清三郎は持っていた土産を糸子に渡した。
「おばあちゃん~!神戸のおじいちゃんやで~…え!?(驚)」
店の奥にいる祖母・ハルに声をかけた糸子は善作が清三郎と後から現れたことに驚いた。
珍しいにも程があります。この仲の悪い2人が一緒にうちに来るやて…
一体どういうこっちゃ、何が起こったんや…
小原家の小さなちゃぶ台を糸子、善作、清三郎、ハルが囲んだ。
善作と清三郎はなかなか喋ろうとしないので糸子は善作に尋ねた。
「お父ちゃん…誰か病気なんか?」
「はあ?なんじゃらほい」善作は首をかしげた。
「オホン!善作君、ワシに構わんとな、君がどんどん話を進めてくれ」清三郎が言った。
「いえいえ私がそんな…ここは是非お父さんから!」善作が清三郎に譲ろうとする。
「いやいや君は糸子の親父なんやから君が好きな様に話したらええ。もう年寄りは黙って聞くのが務めやから。ねえ?」清三郎はハルに同意を求めるように言った。
「そんなら失礼して…糸子!いつまでも子供や子供や思っちゃったら早いもんでお前も今年で…なんぼになってん?」善作は糸子に尋ねた。
「…21や」
「21!ええ歳や!この春からお前も商売始めた。ここらでいっちょ身ぃ固め!」
「はあ?」糸子は耳を疑った。
「川本勝君…お前もよう知ってるやろ?」
「なんやその話か…ウチは結婚する気はこれっぽちもないねん。商売かて始めたとこやし」
「お前にのうても向こうにはごっつうあんねん!」
「嫌いなんか!?」ハルが心配そうにブスッとしている糸子に質問した。
「嫌いやなけど…」糸子はふくれ面を見せながら言葉を濁した。
「なら他に誰か好きな相手でもおるんか?」今度は清三郎が質問した。
「そんなもんいてへんけど…」
「ほんならええやないか」三人が声を揃えて言ったので糸子はたじろいだ。
清三郎達は糸子は洋裁屋を手伝ってくれるような相手でテーラーの川本勝は願っても無い相手だと盛り上がる。清三郎は紳士服と婦人服で客幅が広がると熱弁を奮い始める。
ちょうど客が来たので糸子はとりあえず退散する事ができたが、チラリと奥の部屋に目をやると3人はまだ興奮して結婚話で盛り上がっていた。
いつのまにか大人らはこの結婚話をえらい乗り気になってるようでした。
そやけどそんなこと急に言われてもな…ウチは店の事で頭いっぱいやのに…
糸子が河原でしゃがんで一人考えていると仕事帰りの勘助が自転車で横切った。
「このしゃべりが!このボケ!人の話どんだけ喋りまくってんじゃー!」
平和に鼻歌を歌っていた勘助に糸子は下駄を投げつけ襲い掛かるのだった。
糸子は安岡家を訪れ、勘助の義姉・八重子に結婚話を相談した。
「…けどうちもそんなんやったで。うちも美容師になりたかったさかいまだまだ嫁には行きたないやら言うちゃったら親が勝手に結婚決めてきてしもたんや…」
八重子は髪結いの道具を手入れしながら糸子に話した。
「『ここは髪結い屋から嫁が美容師やりたがったところで旦那も文句言えんはずや、こんなええ話はない』っちゅうてどんどん話が進められて気がついたら祝言の日まで決まっちゃって
…そやから祝言の日に初めて泰蔵さんの顔みたやんで」八重子は笑みを浮かべた。
「へぇ~」糸子は感心する。
「今、思たら親の言う通りやっと。おかげさんで毎日好きな仕事させてもろてるし、泰蔵さんにも文句いっぺんもいわれたことないしなあ。確かにこんなええ話はなかったわ。
無理矢理にでも結婚させてもろてほんまにありががたっかと思ってる」
八重子さんからそんな話されてしもうて…
糸子が家に帰ると母・千代が涙を浮かべて抱きついてきた。
「糸子~こないだのあの人やろ?間違いないわ~!おめでとう!お母ちゃん嬉しいわ!」
「…おおきに」
なんやまた早合点したお母ちゃんがホンマに嬉しそうにそう言われてしもうたら…
それからすぐ祝言の日取りが決まり善作は高砂の練習を始めることになった。
神戸の祖母・松坂貞子は上等の花嫁衣裳を着させたいと電話で糸子を説得するし、電気屋の木之元栄作は電気扇を新しい旦那に買ってもらいとテンション高めに糸子に言ってきた。
街中の人間が糸子をみると結婚の話を嬉しそうにしてくる。
糸子は、その雰囲気にうんざりしていた。
人が結婚するちゅうだけでなんや周りが急におかしなってます。
何やして皆して急にニヤニヤニヤニヤニヤ…
「おめでとう!」通行人が糸子に言って通り過ぎた。
「…はぁ」糸子は返事もせずため息をついた。
「痛て!」祖母・ハルが糸子を叩いた。
「おおきに言わんけ!何ブスっとしてんのよ?」ハルがしかりつけた。
「ほっといてくれたらええのに…結婚決っちゃっただけでエライ晒し者じゃ…」
「みんな喜んでくれてんやし。ありがとうと思わんけ!親父にてひがみ根性強いんさかい」
「ひがんでへんわ!気色悪いだけや!」
糸子が店の玄関に目をやると平吉がにやけた顔で糸子を見ていた。
「なんじゃコラ!うちは見せモンちゃうど!(怒)」
祝言が近づいたある日、糸子は小原洋裁店の前でリアカーを引く男に気がついた。
「あのう…なんか御用ですか?」糸子はその男に話しかけた。
「あんな頼みたい仕事があんやしょ!無茶な話やけどな受けてもうたらほんま助かんよ!
もうあんたんとこしかないんやし!!このとおりや!」
白髪混じりの男は糸子に何回も頭を下げて頼み込んだ。
久しぶりに人の必死な顔ちゅうもんを見た気がしました。
【NHK カーネーション第45回 感想・レビュー】
個人的にツボだったのが、善作が扇風機を持っていっていた事が判明した事です。
あと祖父母の清三郎と貞子が糸子の結婚で急に元気になったところですね。
前回出てきたときは、余命いくばくかみたいな感じでしたがスッカリ元通りに(笑)
いや~可愛い孫の結婚ともなるとそうなるんでしょうかね。
主人公の尾野真千子さん、『名前をなくした女神』っちゅうドラマでDVされたりする可哀相な主婦役やってましたが、そこで知ったんですよね。
今、夕方から再放送してますが、エライ糸子とギャップがありますよ。
でも抜群に演技が上手いです。途中、精神崩壊手前みたいに行くんですが…。
先日、たまたま再放送をチラリと見る機会があって、本当に糸子を演じてる人?ってマジマジと見ちゃいましたよ。
これからバンバン、ドラマや映画に出て欲しい女優さんです。