そうや!うちの手柄はこんなおっちゃんからこんな真剣に仕事を頼んでもらえる職人やっちゅうことや!
「任せてください」糸子は自信たっぷりに白髪男性の依頼を引き受けた。
《本日は都合により閉店いたします》
小原洋裁店の入り口に張り紙を貼り糸子は作業に取り掛かった。
「祝言決まったちゅうてんのにそんな無茶して体壊したらどないすんよ!?」
300坪のテントを明日まで仕上げるという仕事内容に祖母・ハルは驚いた。
「もう受けてしもたさかい…仕上げるしかないし」糸子はハルに構わず作業を続けた。
しかし300坪のテントは生地の量も多く、分厚く力が必要だったため糸子は苦戦する。
ミシンの針は何回も折れながらハルと共に必死に縫ってゆく。
「あ!痛てててて…膝が…」糸子は膝を押さえた。
「ほらみてみ!言わんこっちゃない!」
それでも痛みを抑えながら糸子はミシンを続けた。
― 翌早朝、ハルがテントの生地に巻かれて居眠りしている横に糸子が倒れ込んだ。
「どないしたん?」糸子が倒れた音でハルは目が覚めた。
「でけた…そやけど…ひざ…固まってもうた」糸子はか細い声え言った。
「木岡さん!木岡さん!起きてるか!?」
ハルは慌てて隣家の木岡履物店の扉を叩いた。
「あのな!糸子がえらいこっちゃねん!!」出てきた木岡の妻にハルは説明した。
その後、木岡保男が糸子を背中におぶって走って医者に連れて行くのだった。
「どやった!?」診察室から松葉杖を使って出てきた糸子に保男は尋ねた。
「ミシンは一週間程辞めてまた診せに来なさいって」糸子が答えた。
「この子な!11月に祝言控えてるんですわ!!」
「大丈夫、それまでには治りますよ」保男に迫られた看護婦はニコヤカに応えた。
「はぁ~良かった」保男は安堵した表情を浮かべた。
― 神戸の祖母・松坂貞子も岸和田にやってきて糸子の着物を選ぶ事に。
「ふーん、いまひとつやな~」着物と糸子を見比べて貞子が言った。
「そやけど、これなんか上もん中の上もんなんでっせ?」
呉服屋は説明し、糸子も『この着物でええ』と言うが貞子と千代は他のもの見てみたいというので着物はまた別の日に決める事になる。糸子は面倒になっていた。
はぁ~はよ祝言おわれへんかの…
一方で『結婚祝いの代わりに』といった感じで洋服を注文する客が増えたので小原呉服店の売上は少し上がっていくのだった。糸子は作業しては酷くなるたびに病院にいき『治す気あるか』と怒られて帰って来る日々を送っていた。
そんなある日、糸子は看護婦の格好を見て勢いよく立ち上がった。
何を今日までボケッとみっちゃったんや!こんな商売の口が落ちてるやんか!
「はあ?」糸子の話を聞いた医者が聞き返した。
「看護婦さんの制服を洋服にすべきです!看護婦さんみたいな大変な仕事の人らの制服こそもっと動きやすうて衛生的でないとあきません。ウチはこう見えて心斎橋百貨店の制服を作ったんです。どうかうちに任せて下さい!」糸子は力説した。
「そやけど…アンタ、その膝をちゃんと休めと言うてんのになぁ…」
「それは…弟子が三人いてるよってミシンはその子らに踏ませます!」
医者が糸子が描いたデッサンを見て首を傾げた。
「デザインはもっとええのを考えますよって!ちょっとすんません!」
糸子は医者のデスクにあった紙をとりあげ鉛筆でデッサンを書き始める。
「こらこら!これはカルテや!!」
こうして糸子は見事に看護服10着分、制服の仕事をとったのだったが…
「まずい…」スケジュールを確認すると納期が祝言の翌日であることに糸子は気が着く。
どないかなるやろ
糸子は痛む膝をさすりながら糸子は作業を続けた。そして祝言当日…
「何や!あんたまだ仕事してんのか!えー!?」
小原呉服店に2人を呼びに来た千代は糸子がミシンで作業している姿をみて驚く。
「このアホは何べん言うても仕事止めよらへんやし!」ハルが呆れて千代に説明した。
「時間には間に合う様に行くよって。先行とって」糸子は作業の手を止めず二人に言った。
「知らん!勝手にせえ!!」ハルは心配そうにする千代を連れて家を後にした。
あと一着…あと一着や。落ち着いたらできる!
― 夜/料亭吉田屋「もうどういうこっちゃ!なんで花嫁がこんな遅れてんや!もう!」
吉田屋の若女将、吉田奈津はイライラしながら廊下を歩いていた。
糸子と川本勝の祝言の会場では、花嫁の不在に招待客がザワめいていた。
「ものは相談やけどな…糸子の奴はアホやさかい、いつになるやわからへん…いっそのこと、始めてまうちゅうのはどや?」善作は新郎席の川本勝に小声で話しかけた。
「いや…それは…ちょっとかわいそうとちゃいますか?(笑)」川本も小声で応える。
「いいや!なんもかわいそうな事あらへん!あのアホの為に飲みたい酒も飲めんとに待たされている客の方がずーとかわいそうや!」
「うーん…まあ、そうですね」
「よっしゃ!ほなそう言う事で…えーここいらで始めたいと思います!」
善作は大きな声で会場に話した。
「えー!!」会場のざわめきが一層大きくなった。
「ちょ…ちょい!…花嫁は!?」木之元栄作が善作に尋ねた。
「細かい事言うな電気屋!これはおかまいなく(笑)」
「あのアホ、祝言を何やと思ってんねん!引きずってでも連れて来ちゃる!」
奈津は全く来る気配のない糸子に腹を立て、小原呉服店に向かった。
ドンドン!「ちょっと!いてんやろ!?」奈津は扉を叩いて大声で呼んだ。
「誰…?」中から糸子の声が聞こえる。
「ウチや!奈津や!!何してんのアンタ!?開けり!はよ!」
「自分で開けてぇ…」
「あんた!!!ええ加減にしいや!!!」ガラガラ 奈津は扉を開けた。
「…何?」奈津の目に糸子が目の前で倒れている姿が飛び込んできたのだった。
【NHK カーネーション第46回 感想・レビュー】
「任せて下さい(ニヤリ)」って冒頭の糸子の表情がカッコよすぎ(笑)
翌日までの納期ってのは善作がいたら絶対に激怒ですよ…
あと原作本読んでないので分かりませんが看護婦のナース服って、この作品のモデルとなった小篠綾子さんが考案したものなんでしょうか?
原作本、ドラマが終わったらじっくり読みますが…凄いですね。