沢山の在庫を抱えた生地問屋・河瀬を助けるため糸子は金糸の線の入った生地をどうにか商品にするべくミシンを使って縫っていた。
金糸の上から黒リボンを縫いつけて黒い線のデザインとして活かす。
残りの部分で見頃取ったら無駄も出さんと使えるはずや。
「昌ちゃん、ちょっときてぇ」
糸子は縫い子の昌子を呼ぶと縫い終えた生地をあて採寸を取り始めた。
「ええ生地ですね、これ」昌子は糸子があてた生地を見て感心した。
洋服が完成すると
「ええなぁ!」静子達、縫い子が昌子を褒めた。
「…ええな。いけるなこれ」糸子も完成度に満足し頷いた。
「物がええさかい、着心地もよろしいわ。軽いし温かいし…売れますよ、これは」
「売れるやろけどな…ちょっとやそっとじゃサバけんよってな」糸子は難しい顔をした。
「さばく?」昌子は不思議そうに聞き返した。
「これ、あと100反。生地問屋の倉に販売禁止で眠ってんねん、売っちゃらんと大将首くくってしまうんやて」
「そんなん言うてる人はくくりません!また余計な事に首突っ込まんとください!」
「昌ちゃんな、これ着て店出て、マネキンさんや!」糸子は昌子の忠告に構わず続けた。
「そうやなあ、ええ考えやそれ!」静子達も手を合わせていいアイディアと賞賛した。
「あんたらもやで?」
「ちょっと静ちゃん!洒落たスカートやな〜ちょっと診せて」
静子が歩いていてると木岡履物店の女将・美代が慌てて近づいてくる。
「姉ちゃんが縫うてくれたん、なんか今一番流行の生地らしいわ」
「この黒の線がええわ。今、姉ちゃん、いてる?」
美代は糸子が店にいると聞くとそのまま小原洋装店に向かった。
「へぇー」美代達(静子の服を観て店に来た客)が小原洋装店を覗くと店員達が皆、静子と同じ生地で作られた服をきていることに驚いた。
「おばあちゃんまで!?」見るとハルまで洋装っぽい感じになっている。
「あの生地ごっつい流行ってんやて」新しく来た客に美代は説明した。
「おおきにな。半分でも買うてもろたらどんだけ助かるか!ホンマおおきに!」
生地の在庫を大量に小原洋装店に運び入れた河瀬は糸子に頭を下げた。
「いや、まだ半分も残ってる。あの生地は冬もんやし、年越したら売れんへんよって…」
「まあまあ今年売れなかったら来年売ったらええんやし」河瀬は機嫌よく言った。
「大将、女の洋服ちゅうのはそんな簡単ちゃいます」
「そうけ?えらい難しいもんなんやなあ」
「どないかして全部売り切ってみせますよって!」糸子は自信満々に言ったので。
「一人来い!直ちゃん!よこし!」河瀬は猛獣直子を預かることを再び願い出るのだった。
その後、糸子達が店の中で洋服を着なくても、生地の評判はクチコミで広まり店は行列ができるほどの繁盛振りとなっていた。
「正月までには必ず間に合わせせますよって」糸子は注文した客に説明した
この調子やったらあと半分もホンマに使い切りそうです。
糸子は店の繁盛ぶりを見て満足そうにうなずいた。
「ちょっと先生!ええかげんにして下さい!無理です!縫い子は5人しかいません。
正月までどんだけ皆でいそいだかて今の分だけでいっぱいいっぱいです!
これ以上注文受けんといて下さい。あとのお客さんはうちが断ってきます!」
縫い子の昌子が凄い目つきで糸子に申し出た。
「なんとかする!縫い子が足らんかったら増やしたらええんや!心配しな!」
糸子は二階で紳士服を作っている勝と従業員2名に暮れまで手伝うように願い出る。
「ええで。どうせ暮れまでは国民服が何着かあるだけやし」勝は快諾する。
>よっしゃ職人3人確保!
>あとはいつもの・・・お抱え助っ人団がおる!
糸子は光子、清子を走って連れて来るのだった。
母・千代の作業ミスを指摘していると、以前に直子の面倒をみてボロボロになった少女がまたしても泣きながら直子をおぶってやってきた。
少女は泣きながら店の従業員がいなくなり自分しか子守ができなくなった事を説明した。
「辛かったら『明日から預かれませんて言うてこい』って大将に言われたんやけど…」
「堪忍!お母ちゃん、甘いもん!…堪忍やで。堪忍な」糸子は少女にひたすら謝った。
少女を帰した後で糸子と勝は千代に相談した。
「どないしてもお父ちゃん預かってくれへんやろか?」
「無理やと思うで~明日かて優子、歌舞伎に連れて行く言うちゃったしな」
「歌舞伎!?えらい優雅なこっちゃな!」
「お疲れ様でした~」2階で働いていた従業員が帰ろうと挨拶をしてきた。
「は?もう帰んけ?そんな暇か?そんなに暇なら直子の子守させちゃろか!?ああん?
「それだけは勘弁して下さい!」従業員は逃げるように走って帰って行った。
「うちの弟のとこ…頼もか?馬場の山奥やさかい、いっぺん預けてしもたらしばらく預けっぱなしになってまうけどな。
明日連れてって大晦日に迎えに来るちゅうて」勝が糸子に提案した。
「いや、それはさすがにかわいそう…」
「そやけど…この暮れのいそがし中、他に預かってくれるとこないで?」
糸子達は土産を山程持って勝の弟のところに向かった。
山道を登りながら直子をおぶっている糸子はぶつくさ言い出す。
「こんな遠かったか?前来たときはもっと近なかったか?」
「そんな訳あるかい!前来たときはてぶらやったさかい楽やったんやろ?」勝が答えた。
「前来た頃は結婚したばっかしで気楽なもんやったなあ…戦争も始まってへんかったし勘助もおった。うちは子供もいんでもっと若かったしもっと別嬪やった。
色かてもっと白かったし、脚かてもっと長かった」
【NHK カーネーション第52回 感想・レビュー】
「カーネーション」の主題歌を歌う椎名林檎さんのNHK紅白歌合戦の出場が決まったみたいです。意外なことに初出場。じゃ、尾野真千子さんとかも出るかもですね。楽しみです。
さて、ドラマの方は、いよいよ直子に困って勝の弟に預けるという手段にでますが、お祖母ちゃんのハル、神戸の祖父母じゃ駄目だったんでしょうか?
神戸だったら女中さん達も沢山いるし…キヨサブ祖父ちゃん、宝じゃ!宝じゃ!って喜んでいたし…いきなり山奥って(笑)