カーネーションあらすじ 『秘密』 第55回(12月05日放送)

小原家が朝食を摂っていると米・英軍と戦闘状態に入ったと臨時ニュースが流れた。
「なんやて!」一同は慌ててラジオを囲んだ。
「…終わるどころかまた始まりよった」糸子は一人呆れながら黙々と食事を続けていた。

昭和16年12月、そのニュースで町中は大騒ぎになっていた。
糸子は木之元電気店でラジオに集まる群衆を横目に思った。
あれと一緒やな。いったん男が勝負にのぼせたらちょっとやそっとじゃ収まれへん
糸子は幼い頃にも大人(善作達)が将棋で熱くなったこと思い出していた。
「あー!」糸子は苛立って呻き声を出した。
こっちははよまともな商売したてウズウズしてんや
勝つなり負けるなりどっちゃでもええさかいさっさと終わらんかい!

「ごめんください!」
怖い顔した大日本国防婦人会が5人、店先に現れたので糸子は慌てて口を押さえた。
先頭に立つ女性はモンペを着ずに未だに着物姿の糸子に強く言った。
「そんなことではジュウゴの守りは務まりませんよ!」

「せやからはよ履いといたらええですよて言うといたのに」
昌子はモンペを糸子に渡した。
「あのオバハン!鬼の首でも獲ったような顔で抜かしよって!」糸子は愚痴をこぼした。
「姉ちゃん!小原洋装店の店主がなんちゅう言葉使いや!」妹・静子が注意する。
「先生かて履いたら絶対気にいんで(笑)」昌子が言った。
「あんなあ、昌ちゃん。うちは洋装店や。洋装店には洋装店の意地ちゅうもんがあるやろ!?なんでこんな不細工な物はかなあかんねん!」
散々文句を言っていた糸子だったがモンペを履いた途端に気に入ってしまう。

糸子は客から貰った野菜を安岡家に持って行った。
「堪忍なぁ…いつも貰うばっかしで」玉枝がすまなそうに言うがいつもの笑顔は無い。
「ううん、お客さんからもうたんもんやし…あれ?パーマ機どないしたん?」
部屋の片隅にあるパーマ機が布で覆われていた事に糸子は気が着いた。

「ちょっと目隠しや。けど、いずれは供出せなあかんやろな」八重子が残念そうに言った。
「商売道具なんやし大目にみてもらいよ。うちかてミシンやらアイロンやら鉄のモンなんぼでもあるけど出す気ないで!」
糸子の言葉を玉枝は台所で野菜を整理しながら複雑な表情で聞いていた。

「同じ商売道具でもミシンとパーマ機はちょっとちゃうよ?パーマはそうでなくても風当たり強いさかい…女の洋髪なんか無駄でアホなもんやと思われてる」八重子の説明は続く。
「そんなこと…!」
「時代の流れを見といたら良かった。高い月賦だけが残ってしもた」
そして八重子は勘助が昨日からお菓子屋に働きだした事を糸子に伝えた

糸子はお菓子屋を覗くと勘助はボーっとしていたが前と同じ様に菓子屋の店先に座っていた。それでけで、ずっと元気になったように糸子には見えた。

糸子はもっと元気にさせてやろうと思い、喫茶店に連れ出した。
「去年の夏か、平吉も出征しよってな…アンタの頃が一番派手やったわ。あ!来た!」
勘助が振り返ると踊り子・サエが店に入ってきたところだった。勘助は慌てて顔を背けた。

「勘助、覚えてるか?」糸子はサエに勘助の事を尋ねた。
「覚えてる!覚えてる!久しぶりやな!よう無事で帰って来たな(笑)」
勘助は震えだし、口を押さえて急に店を飛び出した。
「勘助ー!大丈夫か!?」
糸子はサエに子供を任せて勘助の後を追った。
そして糸子は勘助が草むらで蹲って泣き叫んでいる姿を目にするのだった。

夕食時、糸子がボーっとしていると勘助の母・安岡玉枝が凄い形相で訪ねてくる。
「勘助に何した?」大雨の中、傘もささずに玉枝は糸子を睨んだ。
「…さっき2階から飛び降りようとしよったわ」
「なんで…?」糸子は愕然とした。

「世の中ちゅうのはな…皆がアンタみたいに強い訳ちゃうんや。
アンタみたいに勝ってばっかしおる訳ちゃうんや。皆もっと弱いんや、もっと負けてんや。
上手い事いかんと悲しいて、自分が惨めなんも分かってる。
そやけど生きていかないかんさかいどないかこないかやってんねん!
あんたにそんな気持ちわかるか?
商売もうまい事いって家族もみんな元気で…結構なこっちゃな!
アンタにはな、なーんもわからへんわ!!」

「どないか働きに出れる様になったのに…ここまでうちらがどんだけ神経すり減らしてきたか
あんたには想像もつけへんやろ!?
今の勘助にアンタのずぶとさは毒や!!…頼むさかい…もう、ウチには近づかんといて」

ドシャ降りの雨の中、帰っていく玉枝の姿を糸子は呆然と見送った。


【NHK カーネーション第55回 感想・レビュー】

もの凄く見ごたえありました。
いやいや、先週の勘助の傷心から今日の事件の流れは素晴らしいです。
序盤で『モンペを履かなかった』という糸子の図太い性格を改めて表現してからの勘助とサエを会わせるという展開。
今週はどうなるか全く知らないので、『お?勘助働きだしたからサエとくっつく?』なんて糸子以上に浅く考えてましたが…まさかの最後の展開にビックリでしたよ。
普段、明るかった玉枝は泰蔵がだんじり祭のときに失神してしまうくらい息子の事を思う人だったので、相手が糸子でも冷静になれなかったんでしょうね。
加えて、糸子から施しを貰っていたみたいな関係になっていた現実も気に入らなかったんでしょう。
玉枝役の濱田マリさんも上手かったですが、糸子役の尾野真千子の表情がこれがまた凄い引き込まれました。