「なんで、よりによってそんなええ物、モンペなんかにしたん?」
糸子が不思議そうに貞子に質問をなげかけた。
「その方が着る時、ちょっとでも嬉しいやろ?」貞子は嬉しそうに返答する。
「もったいないと思わなんだ?」
「モンペみたいな辛気くさいモン程、上等な生地でこさえなあかんのや。
辛気くさいいうのはバカにしたらあかんで。寿命が縮まる。あんたも年とったらわかる」
貞子達が帰えると糸子は鏡の前で髪をととのえ気合を入れた。
「よっしゃ!」
そして父・善作と祖母・ハルが寝ている部屋の窓を開けた。
「お父ちゃんちょっと我慢してや!」糸子は善作のかけ布団を奪った。
「はひふんねんはぶい(何すんねん!寒い!)」
「この部屋、よどみきってるさかい…ちょっとたまってるもん吹き飛ばそう!」
糸子は布団を干すと晴れている空を気持ちよさそうに見上げた。
>どんより灰色だった前一気に晴れてました。
「着物をモンペにですか!?」糸子の提案を聞いた昌子が驚いた。
「そや!モンペや!おばあちゃんの話を聞いて目から鱗落ちたわ。
モンペこそいい生地でええ生地でこさえなならん!」
政府がモンペを正装と認めても女性は結婚式等に一張羅を着たがってると糸子は説明した。
「やっぱし女はオシャレができてこそ元気がでるもんや!」
「おばあちゃんはそらお金持ちさかい大島でも潰せるけど…」
「やっぱし普通は勿体のうて一張羅をモンペになんかにようしませんよ?」
妹・静子と縫い子・昌子は糸子に不安そうに反論した。
「そこや!二度と着物に戻せんと思てるからやろ!?」
「モンペて着物に戻せるんですか!?」
「…わからん」糸子は首をかしげた。
「なんや…」静子と昌子は落胆する。
「要はモンペにするのにどうバラしたらええか。着物に一番はさみ入れんで済むかや…
それを考え出せたらまたお客さん店に呼べる!」
糸子は新しい服を作りたがらない現状の打開策を説明した。
「『これから新しいモンペの作り方教えます』ちゅうて、またお客さん店に呼ぶんや!
ええか?お客の流れは止めてしまったら終いや。絶対止めたらあかんもんなんや」
糸子のその説明を善作は隣の部屋で天井を見つめながら聞いていた。
夜、目を覚ました糸子は台所の戸棚からカステラを出した。
「忘れれるとこやった…いただきます」
幸せそうに食べながら糸子は思った。
>今時こんなもん、どこにも売ってへん…おじいちゃん、おばあちゃん、コックさん、おおきに…糸子はがんばります!見ててや!
縫い子達(りん以外)と糸子は生地を広げてどうモンペにするか研究を始めた。
昌子が完成したモンペを着て縫い子裁ちの前でくるりと一回転して見せた。
「すてき!これホンマに着物に戻せるんですか?」縫い子が目を輝かせて質問する。
「戻せる!これかてうちの一張羅さかいな!」糸子は得意げに説明した。
「うちの姉ちゃん絶対知りたがるわ!今度結婚式に呼ばれててモンペでいかなならんの
ホンマ残念がってたんです」
「せやろ?そういう時の為のモンペやさかいな!」
「先生!大きい張り紙しましょ!『新しいおしゃれなモンペの作り方教えます!」
「『着物に戻せます!も書かな!」
縫い子達の盛り上がる、善作はそれをきてる
こうして新しくモンペ教室が始まった。
『小原洋装店がまた何か始めよった』と噂にはなったが、新しい事はすぐに受け入れラルことはなく、第一回目の教室は8人の定員のところ5人だった。
「こんにちわ~」サエが教室に参加するため店を訪れた。
若く元気で新しい・オシャレ好き…そして負けん気が強い女性達ばかりだった。
サエが入って来ると女性達が一斉にサエを睨む。
しかしモンペ教室が終わる頃にはイガミあっていた女性達はすっかり仲良くなって自分達の完成したモンペを互いにに誉め合っていた。
糸子は嬉しそうに女性達がはしゃぐ姿を見ていた。
「っかくええモンペ履いてんやし、このままどっかへ行かへん?」
サエが教室仲間に言うと女性達はより盛り上がった。
「糸ちゃんも行かへん?」サエが糸子に尋ねた。
「この忙しいのに…せいぜいあちこち見せびらかしてうちの宣伝してきてな(笑)」
明るく会話をしながら店を後にする5人を見送りながら糸子は呟いた。
「逞っしいなあ~」
「なんや日本は勝てるような気がしてきました」一緒に見送った昌子が言った。
「ウチもそんな気ぃすら!フフフ」
【NHK カーネーション第63回 感想・レビュー】
子守を命じられた『りんちゃん』、なんだか良かったのかどうなのか…
とにかく、小原洋装店、新しく教室を開く事になってましたが頭がいいですね~。
教室なら衣料切符は関係ないってことでしょうから。
いきなり成功しそうな予感がしますが、それを隣で聞いてる善ちゃん。
なんか『よくぞここまで!』と満足そうな目で天井をみてましたが何だか切なかったです。
サエは、ちょいちょい出てくるんですね。
個人的にはもう少し奈津を出して欲しいですが…奈津って実在したんでしょうかね?
ま、糸子も善作もキレることなく、今日は久しぶりに『まったりのほほん』な展開でした。