カーネーションあらすじ 『切なる願い』 第65回(12月16日放送)

「いらん!ついて来るな!」
糸子から泰蔵の出征の話をきいた善作は、出征当日に無理を押して家を出た。

「リアカー乗らんのけ?」
善作が杖をついてフラフラになりながら歩き出したので、店の前にリアカーを準備していた木岡保男が尋ねた。
「泰蔵の出征じゃ!リアカーやら乗ってられるか!」善作が怒鳴った。

「ええやん、もう自分で歩いてちゅうてんやさかい。お父ちゃん言うたら聞かへんで。お母ちゃん、心配せんと家で待っといて」糸子は千代に伝えると先行する善作を追いかけた。
勘助が出征してから4年…糸子達も出征という意味がわかってきていて
何で善作がそうまでして自分の足で見送りたいか糸子にも分かるような気がした。

― 喫茶「太鼓」、大工仲間に囲まれ泰蔵は出征祝いの食事会が開かれていた。
八重子と泰蔵は店に糸子達が店に入ってきた事に気がついた。
「どないしたんですか?」泰蔵は、杖をついてフラフラの善作に心配そうに尋ねる。

「あの…火傷しよってん…近所でたき火を…」栄作がいつもの作り話をしはじめるが
「ボヤや…わしが自分で出したんや」善作は正直に打ち明けた。
「気ぃ付けてください」
「お前こそじゃ。気ぃ付けよ」
「はい」

― 出征を祝う会は終了し、泰蔵は店の外で参加してくれた人々に最後の挨拶をする。
「ほな…いってきます!」
「家の事は任していて下さい」八重子は涙を堪えて泰蔵に伝えた。
「お母ちゃんをよう助けるんやで」泰蔵は自分の子供達に伝えると歩き始めた。

「安岡泰蔵君、バンザイ!バンザイ!」善作が言うと全員がバンザイと両手を挙げた。
泰蔵は振り向き、善作たちに一礼すると再び歩き出し遂には見えなくなった。
泰蔵が見えなくなると善作がよろけて倒れてしまう。
「善ちゃん!善ちゃん!」
栄作と保男が善作の体を支えて心配する中、糸子は遠くの電柱の影から泰蔵を見ていた奈津に気がつく。奈津は泰蔵が見えなくなると涙を流してしゃがんでしいまう。
「奈津…」
>奈津と八重子さん、余計辛いんはどっちやろ…まあ、どっちもやろな。

家に着くとグッタリした善作を見て千代が駆け寄ってきた。
「お父ちゃん!どないしたん!?」
「ちょっとがんばりすぎてしもうた…」糸子はすまなそうに説明した。
「せやから言うたのに!お父ちゃん、大丈夫ですか!?」

糸子達は、善作を布団に寝かせた。
「はあはあ…」
善作の苦しそうな息遣いをみて糸子は火傷のときより悪い事になっている気がした。
「お母ちゃん、なんで泣くん?」糸子は隣でメソメソ泣いている千代に腹が立った。
「え?」
「泣かんといてよ!縁起でもない!」

弱った体で無理をした善作の容態は悪くなり、夜中じゅうずっとうなされていた。
翌日、糸子達は善作を病院に連れ行き、診察をしてもらう。
「疥癬ちゅうヤツやな…。皮膚科やないとあかん」
医者は遠いけど心斎橋の皮膚科の病院へ行くように伝えた。
「体が弱ってきたからかかるんや、虫でも病気でも悪いもんちゅうんは必ず弱い所へ寄ってきよるんやな」
医者の言葉を聞き、善作は落ち込んでしまう。

病院からの帰り道、リアカーに乗せられていた善作が空を見ていることに糸子は気がつく。
「何見てんの?」
「トンビ…」善作は小さい声で答えた。
「…ホンマや。追いかけっこしてる。あらぁ親子やな。もうすぐウグイスも鳴くで」
糸子は答えたが善作は何も言わず悲しそうに空を見たままだった。
>大丈夫やで。うちが絶対治しちゃる。
>何が何でもまたあの元気でやかましいお父ちゃんに戻しちゃるよってな。

家に帰った糸子は妹・清子と光子にこれから寝巻き等を消毒するよう指示する。
2人は祖母・ハルが辛くなって寝に行ってしまい、作っていたイワシの料理がそのままの状態である事を伝える。他人事のように話す妹2人に糸子は腹が立ってしまう。
「いつまでも誰かに頼れる思てたら大間違いやで!
『あれせえ、これせえ』言われるの待ってんと自分からできることドンドンせんかいな!」
「…はい」妹2人はしょぼくれて返事をした。

>看病、子供、火事、商売どれもこれもこの先、どないしたもんか…
糸子が頭を抱えていると八重子と息子・太郎が店にやってきた。
「この間はおおきにな。そこまで買い物にきたさかいついでに懐かしいもの見せよう思って
こないだ押し入れ整理してたら出て来たんやし(笑)」
八重子は洋服写真のスクラップを集めたアルバムを糸子に見せた。
「覚えてる!百貨店の制服作ったときに(笑)」
糸子と八重子は昔のように仲良く盛り上がる。
「懐かしいなあ(笑)」
八重子と糸子は洋服つくりに燃えていた頃を思い出していた。
>人がこんな洋服を着れる頃が確かにあったのに今ではもうどっか他所の国のようでした

2階から降りてきた糸子の長女・優子は、太郎と目が合った。


【NHK カーネーション第65回 感想・レビュー】

昨日の盛り上がりから一転、結構すんなり泰蔵兄ちゃんは出征してしました。
善作も容態が相当悪くなって『まさか…このまま』と思いきや、翌日これまた回復してまして…なんだかそんな薄味の回のようでしたが、実は濃い演技がふんだんに入っているように感じました。口数(セリフ)の少ない泰蔵兄ちゃんは、もう深刻そのもの。前回、日本が撤退した記事を栄作達が読んでいたところをみると、戦況が悪くなって、もう覚悟みたいなものをしていたんでしょう。とにかく深刻な顔です。
善作はというともう絶望というか、もう昔の善作らしさは微塵もありません。
奈津も少し出てましたが今日は、この2人が主役でしたね。
善作は34話の糸子と同じように老いとか感じたんでしょうか。