― 数日後、栄作達の手によって善作の骨壷が運ばれて来た。
「…お父ちゃん、帰って来たで…」
栄作達が泣きながら糸子に骨壷を手渡そうとした瞬間、千代が骨壷を奪った。
「あーあぁぁ!!(泣)」千代はそのまま骨壷を抱えるとしゃがみ込んで号泣してしまう。
「堪忍やで!千代さん!堪忍してやー!」
栄作達は泣きながら千代に謝った。
部屋に上がった栄作達は善作が泥酔したまま風呂に入って亡くなった事を説明した。
「…かなり酔うちゃったさかいな。わしも『今、風呂なんか入ったら危ないでもうちょっと後にしいや』って…」
栄作が説明すると隣で聞いていた保男が話を遮った。
「お前、止めたりなんぞしてへんやないか!」
そのまま栄作と保男は止めた止めないの言い争いを始めてしまう。
「やめて!!」糸子が大きな声で2人を止める。
「お父ちゃんが世話になりました。元はちゅうたらウチが持たせた酒や…うちの失敗や。
おっちゃんらには迷惑かけて申し訳ない事でした」糸子は手をついて頭を下げた。
「糸ちゃん!そらちゃうで!糸ちゃんのせいちゃう!」
栄作達は慌てて糸子に顔をあげるように促す。
そこへ縫い子・昌子がやってきて糸子に小声で話しかけてきた。
「先生、町内会長さんが『お葬式はどないしはります』ちゅうて聞きに来はりました」
糸子は隣で骨壷を抱きながらずっと嗚咽している千代と善作の骨壷が入った箱を見た。
「ちゃんと祭壇組んでやんで…」
「姉ちゃん、けどそんなお金…」静子が心配そうに糸子に言う。
「お金の心配なんかしてる場合ちゃうやろ!?お父ちゃんの葬式やで!?
何があったかてきっちり立派なもん出さな!出さんでどないすんや!」
― 善作の通夜の日
手伝いに来た近所の主婦達が小原家の台所にある豊富な食材に驚いた。
「なんでここだけ食べ物こんなにあんの!?」
「ちょっと!はよせんとお客さんきてまうで!」
木岡保男の妻・美代は低い声で注意した。
― 夜、立派な祭壇が準備され、続々と参列者がみえる。
「おう!これこれ。善ちゃんが写ってんの全部持って来たんやし」
参列者が持ってきた善作の写真を見て栄作や八重子達は談笑していた。
「小原さん、この度は…」恰幅のいい若い女性が糸子に話しかけてきた。
「あ、どうも…」糸子は誰かわからず挨拶をした。
「うち、神宮司の娘です」
「あ、そらわざわざおおきに。まあ入って下さい」
「小原のおじさんには小さい頃から『別嬪さん別嬪さん』て呼んでもうちゃったんです。
子供心に『お世辞やわ!』て思っとったかて何や、やっぱし嬉しいて…おっちゃん来るんよう楽しみにしてました」神宮司の娘は懐かしむように糸子に話した。
続いて一人の男性が酒を差し出しながら糸子に頭を下げた。
「この度は急な事で…なんちゅうたらええか…」
「ああ、お父ちゃんがようご馳走になったちゅう…やっさん?」
「ちゃうんや…世話になったんはこっちなんやで…」
木岡保男の弟・靖は、昔、借金で苦しんだ時に善作が仕事をかき集めてくれたことを糸子に話し、もし小原洋裁店が仕事に困る事があったら言ってくれと伝えた。
「はい…おおきに。おおきに」
>お父ちゃん、みんなホンマに優しいわ
>お父ちゃんがそんだけみんなに優しいしちゃったってことやろな。
糸子は懐から善作の写真を取り出すと祭壇の骨壷の脇に見えるように置いた。
>おおきになお父ちゃん
深夜になり、参列者も来なくなり、栄作や保男は床に酔いつぶれて寝ていた。
手伝いを終えた美代に静子が尋ねた。
「糸子姉ちゃんが言うちゃったんやけどな、お父ちゃんの幽霊としゃべったってホンマ?」
「フフ…おばちゃんもあんなん初めてやった」美代は楽しそうに言った。
「怖なかったん?」
「怖い事あるかいな、そん時はなんも知らんかったけど…ひょっと見たらアンタらのお父ちゃんがいつも通りに『毎度~!』ちゅうてニコニコして入って来ただけやからな(笑)」
「え?なんて喋ってたんですか?」一緒に座っていた木之元節子が尋ねた。
「『いや~奥さんにもよう世話になってるなあ』て言うさかい、まあ珍しい事言うわ思て」
「機嫌取ってる。幽霊やのにな(笑)」静子、清子、光子は笑ってしまう。
「『これからもよろしい頼むで。うっとこの糸子はとにかく馬力だけのアホやさかい』
とにかく糸子を頼むでばっかし何回も言うてなあ…」
美代は懐かしむように妹達に話した。
「そら、ほんまにお父ちゃんやなあ」
すると千代がやってきて、残ってくれていた美代と節子に礼を言った。
「まあ、こんな遅までお世話になって…」
「ゆっくり寝ててええんやで」美代は心配そうに千代を見た。
「はあ。ウチはもう十分寝させてもらいましたよって。どうぞ休んで下さい…後はうちがお父ちゃん見ておきますさかい…」千代は2人に丁寧に頭を下げる。
千代は祭壇の前で寝てしまっている糸子に気づいた。
「はれ糸子、こんなとこに寝てしもて…寒ないやろか…もう一枚、毛布かけとこか。
静子、毛布とって」
千代は糸子に毛布をかけ、寝ている糸子の頭を軽く撫でた。
眠っている糸子の目から涙の跡が見えた千代は涙ぐんでしまう。
祭壇にある写真の善作だけが笑っていた。
【NHK カーネーション第67回 感想・レビュー】
だから月曜日からこういうノリって辛すぎですって(笑)
今日は善作の葬儀ですけど、八重子さんしか来ません。
流石に玉枝さんと勘助、来なきゃ駄目だろ!って思います。
あと、奈津も松坂家(清三郎、貞子、勇)来てません…いや、実はカットされてるだけかもしれませんが…。そういえば、優子達3人娘はどうしたんでしょうかね?二階にいたのかな?
それはさておき、もう序盤から目頭が熱くなりっぱなしでした。糸子より千代に泣かされそうになりましたよ。
なんでか判りませんが、終盤、糸子に毛布をかけるところが一番、やばかったです。
先週からのまさかの展開、そして、まさかの神宮寺娘の再登場でした。