木之元栄作と糸子は闇市を訪れていたが目当ての洋服用の生地がなくガッカリしていた。
「やっぱし皆、まずは食べんのに必死やもんなあ…まだまだオシャレなんかな…」
呟いた糸子の後ろを若い派手な女性が2人通った。
「あ!?あー!!」糸子はその2人組みの容姿に驚いた。
「ちょっと待ち!糸ちゃん!」栄作が糸子の腕を掴んだ。
「見た!?今の子ごっつオシャレで!!」
「止めとき!…あの子らは…男相手の商売する子らや」
「ああ…ほうゆう事か…けど、どこで買うたんやろあの服…」
>ほんでもこの世に確かにオシャレは生きてる。
>ごっつい力で息を吹き返そうとしてるんや。
>そう思えてますますウチの心は燃えて来ました。
「『…清三郎と穏やかにすごしているので安心して頂戴』」
千代は貞子の手紙を昼食中の糸子に読み聞かせた。
「元気にしてんやな、おばあちゃん」
糸子が嬉しそうにすると縫い子の昌子が糸子に八重子が来店したと知らせてきた。
八重子の顔を見るのは泰蔵の葬式以来のことだった。
糸子と八重子は営業が再開された喫茶店“太鼓”に場所を移動させた。
「あんなあ…糸ちゃん…うち実家に帰る事にしたんや」八重子は重く口を開いた。
「…何で?…太郎らは?」
「もちろん、一緒に連れて行くよ」
「おばちゃん一人になるっちゅうこと?…せやけど…おばちゃん1人にすんの?」
「責めんといて糸ちゃん…もう無理なんや!…自分を薄情やと思う。なんちゅうヒドイ人間やと思う…せやけど、もうあの人とこの先、一緒にやっていく自信がなくなってしもたんや!」八重子は涙を流して糸子に言った。
「薄情なんかとちゃう!八重子さんがどんだけ辛抱して来たかうちかて知ってる!」
「泰蔵さんが帰って来るまでは何があっても耐えるつもりやってん…せやけど…もう帰ってきてくれん…お母さんな…泰蔵さんが亡くなったんもうちと結婚したせいやって言うたんや」
「正気とちゃうんやな…今のおばちゃんは…」
「糸ちゃんみたいに自分の好きな仕事にうちこめてたら、もうちょっと辛抱きいたかもしれへんな。好きな仕事ちゅうもんは力をくれるもんやろ?
うちにはそれすら今は…もうないよって。…弱いわ。弱い女になってしもうたわ」
八重子はそういうと涙を流し嗚咽してしまう。
>とっとと戦争の事なんか忘れて前向きたい…何も無かったみたいにパーッとオシャレしたりお菓子食べたり笑たりできたらどんなええやろ
「いらっしゃい…」店に戻った糸子は小さい声で店の客に挨拶した。
>けど戦争が残したもんは桁はずれて重たて…しんどて
糸子が店に戻ると八重子の長男・太郎が糸子の帰りを待っていた。
太郎は岸和田に残り玉枝と暮らすため働かせて欲しいと糸子に頭を下げるのだった。
― 木之元栄作と糸子は再び闇市へ行く。糸子は先日の派手な2人組みに声をかけた。
「なあ、その髪、パーマなん?どこであてたん?」
「どこでもええやろ?教えへん!」2人組の女性は挑戦的に返答した。
「教えてくれてもええやんか!」
「やめときて!田舎のおばちゃんがパーマあてたてブチャなるだけやさかい!」
そう言って二人は笑いながら糸子を置いてどこかへ言ってしまう。
「何や!あの子らのあの口の聞き方!…腹立つけど
カッコええ…あの子らのオシャレ、パーマごっつサマんなってる……!!」
糸子はファッションに感心し、何かを思いつくと隣にいた栄作に質問した。
「おっちゃん…パーマ機って今どこに残ってるやろ?」
その後、木之元栄作は電話を使い東京に中古が一個売られてると情報を掴む。
― 糸子は喫茶店“太鼓”にやってきた八重子に楽しそうに提案した。
「八重子さん!東京行こ!東京にパーマ機買いに行こ!」
「え…?」いきなりの事に驚く八重子。
「それ買うて安岡美容室始めよ!」
「…いや、うっとこ今、そんなお金ないさかい…」
「うちが貸す!」
「いや糸ちゃん、お金ちゅうのはそんな簡単なもんちゃう…」
「あげるちゅうてんちゃう!!貸すだけや!ほんでなすぐ帰せる様になんで!
安岡美容室は絶対繁盛する!かけてもええわ!」
「八重子さん、日本中の女は今は…これからは“パーマ”と“洋服”なんや!
うちも頑張る!せやから八重子さん!頼むわ!もう一踏ん張りしよう!ここ乗り越えよう!
ほしたらうちら絶対どないかなるよって!
八重子さん、言うてたやん!好きな仕事にうちこめたら強いおんなになれるて!せやろ!?」「いや、せやけど…ちょっと待って!ちょっと考えさせて!」
「あかん!!考えたらあかん!何も考えずに東京行こ!」
「決めた事なんや!長い事かかってやっと決心したことなんや!」
険しい表情になった八重子に糸子は今度は甘い声で囁いた。
「…パーマ機やで?…安岡美容室やで?東京行こ。東京」
「安岡美容室…東京…」
それから一時間後、八重子は東京行きを決めたのだった。
【NHK カーネーション第78回 感想・レビュー】
糸子が八重子を説得するシーン…最後の方では八重子はブツブツ言ってます(笑)
目なんかトロ~ンてしてますし、完全に放心状態です。まるで催眠術(笑)
普段、真面目なキャラクターだけに面白いですね。
そして中古とはいえ、パーマ機を買うほどのお金を貸せるという事は、かなり糸子の店も再び軌道に乗ってきたってことでしょうね。闇市通ってるし。
糸子にとっては初めての東京だと思うのですが…東京にいくエピソードは明日からやる?
まさか、明日…『パーマ機を買ってきてから数日後』とかないですよね(汗)
だんだん初期のカーネーションみたいなノリになってきたと思います。