安岡髪結店を訪れた奈津は勘助と泰蔵の仏壇に手を合わせていた。
奈津は派手な洋服ではなく和服を身に纏い髪もきちんと結ってあった。
八重子は2階で寝ている玉枝に声をかけた。
「…何や?」玉枝は、不機嫌そうな声をだした。
「奈っちゃんがお線香あげに来てくれたで…降りてけえへん?」
玉枝の返答がないので八重子は立ち去ろうとすると部屋から玉枝が呼び止めた。
「…ちょっと。手伝うて…」
一人では自由に歩く事ができない玉枝は八重子の肩を借りてゆっくりと階段を下りた。
奈津と玉枝に八重子はお茶を出すと玉枝が奈津に話しかけた。
「よう参っちゃってくれたな」
「こないだは…せっかく来てもうたのにお構いもしませんで」
「ところで…あれや。うちの店な、今更“髪結い”でもないしな
名前を変えようか思てんねん。なあ?」玉枝は横に座っている八重子に振った。
「えっと…」八重子は突然の事で返答に詰まる。
「安岡髪結い店ちゅうんも古いやろ?何がええかいな?今時の言い方で…安岡…」
「安岡美容室?」奈津が聞き返した。
「それや。安岡美容室。…あんなあ店の中、もっとハイカラにしてな
アンタ(八重子)ももう着物やのうてな
ちゃんとした仕事用の服を作ってもらい、糸ちゃんに」
「はい」八重子が返事をする。
「…まあ、ほんな訳でな、モノは相談やけども手伝うちゃってくれへんか?奈っちゃん。
やっぱり、ようさんな、お客さん取り込んでいこう思たら人手がいるよってな。
手伝うてほしいんや」玉枝は立ちがるとヨロつきながら奈津のそばに座った。
「なあ手伝うてえな。奈っちゃん」
「おおきにおばちゃん…そやけど、うちはもう…表の世界の女…」
奈津が言いかけると玉枝は奈津の口を押さえ強い口調で言った。
「言いない!金輪際、言いない!ええな」
玉枝は奈津の口にあてていた手を外した。
「…もう忘れ。忘れてな先行こ。うちもそないするよってな。あんたもそないし」
奈津は涙を浮かべながら玉枝の言う事に頷づいた。
>奈津は借金を月払いで返していくことになり、うちがその保証人になった。
「もう…!先生ええかげんにして下さい!」
保証人の判を押した糸子を昌子と松田は店の奥に連れて行き注意をする。
「思いつきで人を助け過ぎです!パーマ機の分かてまだ返って来てないちゅうのに。
借金の保証人て!」
「どないかなる!稼いだらええんやろぉ?稼いだらぁ~?」
糸子は挑発的な口調で言った。
― 安岡髪結店では玉枝の髪をセットをしていた八重子が目をハンカチで拭っていた。
「八重ちゃん…堪忍してや。今までの分返して行くさかい…堪忍やで」
「すんません」八重子は涙を流しながら頭を下げた。
― ある日、作業中の糸子が顔をあげると店の前に奈津が立っていた。
糸子は作業を中断し、何も言わず奈津の目の前に立った。
「向こう向き」糸子は奈津の体を手で測ると淡々と裁断を始めた。
仮縫いが終わると糸子は奈津の体に生地をあてた。
「もうええ…こんでチャラや。うちは…祝言の時、あんたに助けてもろた。
うちはあんたに一言も礼を異うてない。あんたも言わんでええ」
― それから数日後、糸子の作った制服を着た奈津が安岡髪結店の片付けをしていた。
「奈っちゃん!ちょっと!」外から玉枝たちが呼ぶ声がしたので奈津は外に出た。
「ちょっと曲がってるわ!」
奈津と同じ制服を着た八重子と玉枝が“安岡美容室”と書かれた看板の取り付けをしている木岡と木之元に看板の位置を指示していた。
「おはようさん!」糸子が開店祝いを持って現れた。
玉枝達は、安岡美容室の看板の前で仲良く集合写真を撮った。
― 奈津、八重子、太郎、糸子が写っているその写真をベランダで糸子は微笑みながら眺めていた。後ろからはお囃子が聞こえている。
「行ってきます!」直子がねじりハチマキを頭にし、ハッピを着て勢いよく出かけていく。
「直子、がんばりや!」糸子は2階の窓から1階の直子に声をかけた。
「うん!!行ってきます!」
>直子がどさくさに紛れて潜り込んでしもたせいかどうなんか…
>女の子でも“だんじり”を曳いてもええようになりました。
「新しい時代やな…」
糸子は嬉しそうに呟いた。
【NHK カーネーション第86回 感想・レビュー】
色々と意見がわかれる回かもしれませんが、私的には大変面白かったのであります。
まず、冒頭からの奈津登場で鳥肌です。
ちゃんと和服(喪服?)を着て、化粧もケバくないし…やはり奈津(栗山千秋)は和服が似合いますね~。申し訳ないですが前回までの派手な奈津は笑えちゃいます。
そして奈津が来たことを知ると永い眠りから目覚める玉枝(笑)
最後には普通に元気に戻ってます…病気とかではなかったんですか?
糸子と奈津、糸子と玉枝、八重子と玉枝、このギスギスした関係にようやくピリオドが打たれました。何が感動したて、最後の集合写真で奈津が糸子と腕組んでんの(泣)!
まるで漫画スラムダンクの最終話の桜木花道と流川ようです。
今日がカーネーション、最終回でも良かったくらい満足しましたよ(笑)
あと保証人として糸子が判子を押すシーンで糸子の後ろでスゴむ木岡と木之元のおっちゃんの表情…コントです(笑)。