「今日あんたを呼び出したんはな…レディメード」北村が切り出した。
「レディーメード…なんですかそれ…?」糸子は聞き返した。
北村は慌てて手帳を確認した。
「合うとるやんけ!レディーメードや!」
「せやから何ですかそれ?」
「知らんのかいな?洋服の新しい商売法や!アメリカ式の!」
北村は注文を受けてから作るスタイルではなく既製品を売る方式を説明した。
「同じ型で何枚も何枚も作ってから店に並べて売るんや。
これやったらな無駄が出にくいさかい値段がグッと下げられんねん!
そやからこのレディー…」
「レディメード」
「レディーメード!これがこれから日本でも絶対流行る思てんねん!」
「はあ…ほんで?うちに話があるちゅうんは…」
糸子が話の要領を得ないので質問すると組合長の三浦が説明を始めた。
「小原さん…こいつはこいつなりにこれからの時代をこう読んどるという事や」
組合は北村を応援したいと考えていて店と工場は心斎橋の外れを準備していると説明した。
「後は商品をどうするかや…そこでアンタの協力が欲しいというわけや!」
三浦はバシンと机を叩いた。
「…けどすんません、今はうちも自分の店で手一杯ですよって…」
「ようわかってる!アンタを工場に張り付けてこうとは思ってない」
三浦は糸子に商品の型をいくつか用意して工場を仕切る監督に教えればいいと伝える。
「沈金は歩合制や、売り上げの一割!」三浦はニヤリとした。
「うーん…」店についても糸子は悩んでいると。
「受けましょ先生!受けなあきません!」経理の松田が迫ってきた。
「120円のブラウスが300着売れて…!ええ商売や!」昌子がそろばんも弾いて言った。
糸子が悩んでいる理由を松田は北村だと思っていたが
「あんなん、ただのヒキガエルや。やかましいだけでどうっちゅうことないで」と糸子は言ってのける。
「うちと真逆の商売やんか。どこの誰が着るか知らん。『とにかく数こさえて売れたらええんや』ちゅうな…なんや話が雑やん!情ちゅうもんがないで」
糸子は渋る理由を昌子と松田に教えた。
「先生はこんなええ話、断れる立場じゃありません!」
松田は安岡美容室の改修にも多額の金額を貸したことことを挙げ、説得した。
「万が一の事を考えたら稼げるだけ稼いどかあかんのわかりますやろ!」
その時外国人の客に困っていた昌子が糸子に助けを求めた。
「先生!!ちょっと頼んます!」
「あーどうも!こんにちわ!
…ディオール!もちろん知ってるで~うちもごっつ好きなんや!」
糸子は何を言っているか判らなくても臆することなく楽しそうに接客をするのだった。
ファッション誌を持ってきた八重子が糸子に質問した。
「あれ?おチビさんらは??」
「ふふーん、ピアノや。明日は習字、水曜は絵、あと長唄とお華とダンスと日本舞踊…」
糸子はうるさい子供達に習い事を沢山させることで、子供達のためになり、かつ仕事がはかどり客に迷惑がかからないという利点を挙げた。
「一石二鳥三鳥やいや三鳥やろ!」」
「なるほどな!(笑)」
>なんちゅうて、のんきに笑てたウチが甘かった…
「お母ちゃん、ピアノ買うて!!お母ちゃん、ピアノ買うて!」
優子達はピアノ教室から帰ると大騒ぎしながら糸子に詰め寄った。
>さあ、このごんたが三人固まったときの恐ろしい事。
夜、糸子が寝ていると3姉妹はクレヨンでピアノの絵を楽しそうに書いていた。
「ピッカピカやしなあピアノ!」「ごっつい綺麗な音出るし!」
>はあ…あんたらにピアノなんか、やらせたお母ちゃんが悪かった。
>悪かったから堪忍してえ。糸子は布団に潜った。
「こんにちわ」ある日、糸子は泉州繊維商業組合の事務所を訪れた。
「よう来たな。まあ座りよ」三浦が促すとちょうど北村も部屋に入ってきた。
>2年ぶりの事務所にもう周防さんの姿はありませんでした。
>なーんや。うちはあの人に会えへんために組合を避けてたんやけど…
>もうそんな必要なかったんやな
糸子はおかしくなって三浦の説明中に笑ってしまう。
「え?なんや?」
「あ…あの組合長、うちまた今月から会合出させてください!」
「ほう!出え!出え!」
「北村さん!またやりましょう!飲み比べ(笑)」糸子は隣の北村に声をかける。
「嫌じゃ!里芋なんか潰したかて何もおもしろないちゅうねん!」
「里芋つぶれるかいな!」
「里芋つぶしたろちゅうてんねん!」
糸子と北村はそのまま言い争いをはじめてしまう。
「喧嘩をすなちゅうてるやろ!ええか?お前らこれから力を合わせて仕事していくんやで!」三浦は大きな声で2人を叱った。
「じゃが芋みたいな顔しやがって…」糸子がボソっと呟いた。
「じゃが芋言うたやろ?今!」
糸子「じゃが芋やんか」
北村「わい、ちゃんと話きいてるやんけ!」
糸子「じゃが芋」
北村「じゃが芋は今言わんでええやろ!」
糸子「じゃが芋は酒弱いでぇ!ハハハッー(笑)」
北村「里芋、潰したるちゅうてん!じゃが芋が今度、里芋を…」
糸子「潰してもうまいわ!」
再び糸子と北村は言い争うのだった。
【NHK カーネーション第88回 感想・レビュー】
ほっしゃん、上手いです。
昨日も書きましたが…今日はなんか本当にそう思いましたよ。
糸子と北村の犬猿の仲がこれまた楽しいですね。糸子は今まで善作、ハル、奈津とやりあう相手がいましたが、奈津が無事に再就職を決めてから、そんな雰囲気も無くカーネーションらしさがないなぁ~と思っていたので、ほっしゃんの存在は実に楽しいです。
アドリブ?のような最後のやりとりは本当に笑えました。
それと安岡美容室の改修工事の費用も糸子が出していたんですね…娘3人のスケジュールを習い事で埋められるし…凄い経済力です。