「おう!糸ちゃん!お帰り!…お?熱、あんちゃうんけ?」
夕方、呆けながら岸和田に帰って来た糸子に木之元栄吉が声をかけてきた。。
「…ないわ!…熱なんかないわ!!」
糸子は、そのまま井戸に行き勢いよく顔を洗った。
>ちゃう!ちゃうちゃう!周防さんはうちを職人と認めているだけや!
>うちの指導がうけたかっただけや!うちに会いたかったんとちゃう!
「勘違いすな!!」自分を言い聞かせるように糸子は声を出した。
糸子が家に着くと3姉妹が正座して待っていた。
「お母ちゃん、話あんねん!!…ピアノ、買うてください!」
糸子は善作にパッチ屋で働きたいと願い出た昔を思い出したが
「あかん!!」
― 翌朝、糸子は周防が作った婦人服を見て感心した。
「へえー!ええですね!ワンピースみたいに着てもいいし…うん!これ売れますよ!」
後から来る北村が気に入ればいいと糸子は言うが
「気にいらんっちゃなかでしょうか?生地代のかかりすぎとりますけん」
と周防は笑顔で答えた。
「アホけ!生地代かかりすぎじゃ!!」
周防の作った服の見積を見て北村が大きな声を出した。
「こんなようさん生地使わなあかんけ!これ丈、短したらええねんてこんなもん!
こんなヒラヒラもこんなぎょうさんいらん!減らせ!わかったか?」
「できません」糸子はキッパリと答えた。
「はあ?」
「今、スカートは丈が長うてギャザーがようさん入ってへんと売れませんよって」
「そんなもん売ってみんとわからへんやろ!?」
「わかります!絶対売れません!」
「お前な…売値120円のモンを作ろうかっちゅうてんのに何、生地代に20円も使てんや?
どんだけ割悪い商売させようと思っとんじゃ?嫌がらせけ?」
「…北村さん、店流行らせたいんですやろ?人が欲しがるもんを安う売る…それを徹底的にやらんとあきません!特に開店が一番肝心なんです!
あの店は年団以上のものを安う売ってくれる。
そないお客さんに信用してもらおう思たら最初は多少の我慢もせなあかんのです!」
「ああやかまし!社長はワイじゃ!おのれらは、言う通りにしといたらええのじゃ!」
「…ちょっと来い!ええもん、みせちゃら!」
糸子は北村の襟を掴むと工場の外へ連れ出した。
「引っ張んな!社長!…社長じゃ!」
>こいつは、とにかく現場を見んとあきません。
糸子は自分の店に北村を連れて行き、婦人服の商売を直接見せることにした。
北村は端から暇そうに眺めていた。
「どないでしたか?今日婦人服の商売っちゅうんを見てて」
夕方、糸子は北村に感想を求めた。
「ようわかったぞ!女ちゅうんはほんまに…アホじょ!
どいつもこいつも我がが不細工なのをほったらかして文句ばっかり言いよる。
女相手に商売をしよう思っちゃんのが間違いちゃあるちゅうことやの?」
「はあ…、あんた一日見ててそんな気の事しか言われへんのけ?」
糸子が北村に呆れて大きくため息をつくと千代がやって来た。
「お仕事の話はそれくらいにして…さあさ、お夕飯どうぞ!」
「…いやいや!わいも帰りますよって!」
嫌がる北村を千代達は無理矢理ひきとめる。
― 夕食を食べる事になった北村は酒によって上機嫌になっていた。
「ここはお客さん来たら毎回こないもてなしますんかいな(笑)」
千代は善作が酒好きだったため家で男が酒を飲むのが好きだと説明した。
北村は自分は男兄弟に囲まれて育った事を口にする。
「家に女がおるっちゅうのは…そんな変な意味やのうて…ええもんやな」
「え?泣いてる?…何で泣くんですか!」
北村がしんみりしていたのを昌子が茶化した。
― 翌朝、小原家で北村は目を覚ました。
北村は千代達が朝食を準備する音を聞きながら再び目を閉じた。
― 糸子と一緒に工場に来た北村は来るなりソファに疲れた様子で座った。
「ワイな…女も服もよう分からへん。せやから全部こいつに任せら…ほなな」
北村は、そう言い残すと再び工場を出て行ってしまう。
「…何のあったとですか?」周防は不思議そうに糸子に尋ねた。
「ようわからへんけど…毒気を抜いてもうたみたいで…お母ちゃんが」
【NHK カーネーション第90回 感想・レビュー】
嫌がる“ほっしゃん”にお酒を勧める千代ですが、その横で普通に晩酌をしてた糸子…
二年前の組合の会合以来、はまっているのでしょうか?
とにかく、なんかオッサンです(笑)
善作に似てきたな~という感じですね。
ピアノ欲しさに糸子を待っている三姉妹のシーンで、ピアノを買ってあげるのかな?と思ったのですが「あかん!」って物を叩きつけます。
その時に善作が昔、湯飲みを割ったのと同じ行動をとりますが、勝がいないから糸子は父親までやるつもりなのかなって思いました。父親の参考として善作(笑)
そんなオッサンのような糸子と千代、なんかいいコンビですね。
それに久しぶりに千代の天然さが糸子を助けてなんか痛快でした。