4月15日に開店が決まった北村の店『北村商店』で販売する婦人服の試作品を糸子、周防、北村は熱心に見つめていた。
「儲けが少ない分、数で勝負です。この服は絶対売れますよって数を揃えるだけ揃えておきましょう!品切れっちゅうことがないように」糸子が自信満々に言った。
「ああ」北村は服を真剣に見ながらうなずく。
「生地を準備できるだけして下さい!どんどん縫わせて行きますよって!」
「よっしゃ!頑張ら!」北村は気合を入れた。
>そんな素直な返事されてしもたら
>こいつには絶対失敗させられへんっちゅう気になってまうやないか
― 夕方、周防に強引に誘われて糸子は組合の月会合(飲み会)に参加した。
「いよいよやなあ!新しい時代が始まるんや!焼けてしもたもんな…
二度とは取り返せえへん…でも新しいもんまだ手に入れる事できるんや。
お前ら切り開け!なんぼでも!ほんでまた新しいもんをみせてくれ!」
組合長の三浦がしみじみと声をかけると北村が嗚咽してしまう。
「おいおい、なんや大の男が…(笑)」
>北村さんの家に何で女がいてへんのか、周防さんは長崎でどんな目に遭うたんか
>組合長は何を焼かれてしもたのか…うちは何も知らんけど
>ほんでも皆とこないしてるうちに
>何やお湯につかったみたいに…心の中から解けていくもんがありました
月会合を終えた糸子は一人夜道を歩いていた。
>はあ…うちは恋しいんやな
>うちはお父ちゃんが好きでした。
>勘助がかわいいてしゃあなあて泰蔵兄ちゃんに憧れてたし
>勝さんを大事に思てました。
すれ違うカップルを目で追ってしまう。
>そういう人らを全部なくして、空いた穴にえらい人が入って来てしもた
「かなんなあ…」
>恋しいて恋しいて
「人のもんやのに…」糸子の目から涙が零れ落ちた。
家に帰るとタンスの中から『ピアノ買うて』と書かれた紙が大量に入っていた。
「まーたこんなびっしり…」糸子は寝てる子供達をみた。
― 開店が近づくと更に忙しくなり北村や周防は泊り込む事も多くなっていた。
>泣いても笑ても家の仕事は15日までや
>そこまでは余計な事を考えんとがんばっちゃろ
>何が何でもこの人らの開店を成功させちゃろ
>それがでけたら一個だけ自分に許そうと思てる事がありました
>それは悔いの残らへん様に自分の気持ちにケリつけるっちゅうことです
― 北村商店開店当日
普段、和服で手伝っていた糸子は化粧をして洋服姿で工場に顔を出した。
「おはようございます…昨日もまたあれから徹夜したんですか?」
糸子はソファで寝ていた周防に声をかけた。
「結局、北村さんと四時頃まで…おいもそろそろ店の方ば行かんば…」
周防はソファから起き上がると糸子が何か言いたそうにしている事に気がつく。
「あ!あれですよね?契約書…」
「いえ…今日は…これを…無事、開店おめでとうございます」
糸子は後ろの手に持っていたサクラが咲いている枝を渡した。
「ありがとうございます…あれ?よう似合うっとですよ」
周防は糸子が洋服を着ている事に気がついた。
「周防さん…うちは今日でしまいです。
最後に言わせて下さい。好きでした。
ほんなけです。ほな、さいなら」
糸子は淡々と口にすると出入り口のドアを開けようとした。
周防は糸子の腕を掴み、糸子を抱き寄せた。
「おいもです……おいも…好いとった…ずっと」
北村は廊下の窓からじっと2人の様子を見ているのだった。
【NHK カーネーション第91回 感想・レビュー】
凄い展開…『おいも好いとった』ですよ!?ブーツを守った嫁をヨソに!
てっきり糸子の憧れで終わるのかと思いきや…NHK、やりますね。
決して安くないNHK料金を払っている甲斐もあるというものです。
周防が今まで糸子の事を『意識しているかどうか』という点をあえて描かなかった事が周防の苦悩を感じさせていいラストに見えました。
ほっしゃんが最後複雑な表情を浮かべながら2人を見ているのも驚きましたよ。
なにあの表情…糸子に惚れてる?…でも、ケンカしてるし…里芋とか言っていたし…
ハッ!!…まさか…周防に!?
来週の予告では後ろに流れる音楽もいつもの『ツチャチャチャン♪』っていうやつではなく、なんかこう重~い暗~い音楽でしたね。
めっちゃ月曜日が楽しみです。