昭和23年6月、小原洋装店で働きだした周防の足は完治まで一週間となり、その週には周防用にミシンが届けられ、紳士服の仕事を開始する予定になっていた。
流行も手伝って背広の見本をショーケースに飾ると早速、小原洋装店には依頼が少しずつ入っていた。
婦人服の注文や背広の注文が増え、小原洋装店は順調に繁盛していた。
電話の受話器を取ると会計の松田が愛想良く応対する。
>会計の恵さんの機嫌がええんも嬉しいけど…
>周防さんの顔がやっと楽そうになったんが何より嬉しいです。
ある日、2階の部屋では聡子がオルガンを弾いていた。
>とうとう根負けしました。
>ピアノやのうて中古のオルガンちゅうところがお母ちゃんの意地です。
ケンカしないようにと“オルガンを弾く順番”が書かれている紙が貼られていたが直子が学校から帰宅すると聡子が見ていた楽譜を放った。
「もう4時や!」
「まだ4時ちゃう!長い針、12のとこ来てへん!」
「短い針は4んとこ来てる!」直子は強引に座るとオルガンを弾きはじめた。
すると今度は優子が部屋に入って来て楽譜で直子の頭を叩いた。
「痛ったぁ~!」
「何であんたが弾いてんのよ?うちの番やろ!?」
「姉ちゃんが遅いのんが悪いんじゃ!」直子が優子を突き飛ばしたので2人は取っ組み合いをを始めてしまう。その隙を見て聡子はオルガンを再開した。
「ケンカの元になるんやったらオルガン、店戻してまうで!そんでええんか!」
糸子は三人を並ばせて説教を始める。
「お母ちゃん、うち五時からお花や」説教の途中で優子が申し出る。
「…しゃあないな。ほな行き。…あんたはどれも習い事続いているよって…そこは偉いな。
アンタらは全部やめてしもたけど…」糸子は直子と聡子を見た。
「全部ちゃう!絵はやってる。」直子は部屋に飾っている絵を指差した。
「まあ…絵だけな」
「絵だけは姉ちゃんよりずっと上手や」直子が鼻をならすと二人は再びいがみ合った。
「いちいちいらん事言わんでエエ!あんたも相手にせんで行き!」
直子と聡子は安岡美容院にやって来ると店の前で風鈴をもった中年男性がいることに気がついた。男性は直子達と目が合うと背を向けた。2人は男性に構わず店に入る。
「あれ。また来たんけ!?」八重子は直子達の来店に驚いた。
「お母ちゃんが『行け』ちゅうた」
店の奥から玉枝が現れ2人に散髪が終わったらカリントウを食べようと誘う。
6時になり糸子は直子達が心配になり安岡美容院を訪れる。
糸子も店の前に立つ風鈴を持った男性と目が合が男性はあわてて背をむけた。
糸子は怪訝そうな顔で男性を見ながら店に入った。
「あれ!何よばれてんよ!?」
「カリントウや。糸ちゃんも食べり」玉枝が糸子に言った。
「ええとこきたな。いただきます(笑)」
「奈っちゃん、もうええからはよ上がり」八重子は後片付けをしてる奈津に伝える。
「…ほな、すんません。お先です」
奈津は店を出ると店の前にいた男性から風鈴を受け取り帰っていった。
糸子はカリントウを食べながらその光景を不思議そうに見ていた。
「誰?なあ誰誰誰あの男!?」
「毎晩あないして奈っちゃんのこと迎えにきてんやし」
「怪しない?変なヒゲ生やして顔かてうさんくさい」
「ほうか?ええ人そうやしな、背広かてええの着てるで?」
― 夜、直子は千代の布団を敷く手伝いをしていた。
「ホンマやで?三年の中でうちが一番絵が上手やって言われてんやで!」
「へえ~そら凄いなあ!」布団を押入れから出しながら千代は笑った。
「学校中でかてうちが一番上手なんやで!」
「それはどうかな~六年生に姉ちゃんおるやないか?」千代は優子の絵を誉めた。
「姉ちゃんなんかうまない!うちのんが上手い!」
直子が部屋に戻ると優子が裁縫していた。
「何しての?…そんなん作ったかて店に置かしてもらわれへんてわかってんのに」
「作りさかいから作ってんやし…自分で才能あるってわかってんやし!」
優子が直子は机に布を慌てて取り出して裁縫を始めた。
― ある日、2階に周防用のミシンが届けられる。
「良かったですね」ミシンをチェックする周防に糸子は声をかけた。
「本当にありがとうございます」周防は正座をして頭を下げる。
「いや、せやけどこれからどんどん稼いでもらいますよって(笑)心行くまでええもんこさえて下さい」
「はい」
>2人だけでいてる時も…皆といてる時も周防さんは絶対そばに来ようとしませんでした。その代わりうちがふと見てみてる時、周防さんも必ずこっちを見てくれました。そんなけでウチは何ぼでも頑張れる気がしました。
糸子達が総出で店の生地をたたんでいると男性客が声をかけてきた。
「あの今日はお休みですか?」
「やってるんですけど今日は店…棚卸し…で…」
糸子は客が奈津を待っていた中年男性と言うことに気がついた。
「どうも…えーっと、こちらは紳士服もやっておられるんですかいな?」
「あ、ああ…はい」
「どうもいらっしゃい。じゃあどうぞ二階へ」周防が案内して2人は2階へ。
糸子は心配そうに階段から2階を見上げた。
【NHK カーネーション第94回 感想・レビュー】
新キャラとしてラサール石井氏が出てきました。
先週の予告で出る事はわかってましたけど…謎の男性です。
なぜ風鈴を持って奈津を待っていたのか…もの凄い気になります。
気になりすぎてNHKのホームページで“あらすじ”を見てしまい衝動にかられてしまいます。…我慢我慢(笑)。でも何故風鈴?まさか周防さんとかけてる?
昌ちゃんは完全に周防さんに熱上げてますね…何も知らないで可哀相に…