「ついでがあったもんですからね~厚かましいとは思ったんですが寄らせて頂きました」
原口は上機嫌に糸子に挨拶をした。
「まあ!あがって下さい!何もありませんけど」糸子も愛想よく招き入れる。
「はあー!素晴しい!一流の生地を揃えておりますな!」
原口はオハラ洋装店の店頭に並んでいる生地を見て大声を出した。
「流石!…うちは生地だけは最高の物を扱う様にしてます(笑)」
「元は呉服屋さんでいらっしゃったとか」
「そうなんです~父がやってました。呉服屋はとにかく反物勝負やさかいその気質がうちにも残ってやんと思います」
「うーん!なるほど!!」
一方、突然の原口の訪問に千代は店の奥でうろたえていた。
「そんなわざわざ…優子はまだお嫁に行く歳ちゃうし…年離れてるし…」
「おばあちゃん、何の話!?」千代の慌てようをみた直子が声をかけた。
「直ちゃん~勘違いかもしれへんけど…結婚の申し込みに来たんとちゃうか?」
そして千代はそのまま泣き出してしまう。
糸子達は原口を囲んで夕食を食べる事になる。
「いや~皆さん!デザインの力というのは物凄いものですねー!」
原口は酒を飲みながら機嫌よく熱弁をふるっていた。
「そう!先生!わしもデザインが気に入らなくて電気屋辞めたんです!」
木之元栄作が賛同した。
>優子がかぶれるだけあって確かに原口先生はごっつええ先生でした。
2時を回ると千代や栄作達はすっかり寝てしまうが原口の熱弁は止まらないでいた。
「これからはですね広い視野を持たないと。私は今ヨーロッパから目が離せません!」
原口の話を聞いているのは糸子と昌子、そして直子だけだった。
「あれー!もう二時!?」原口は時間に気が着くと驚いた。
糸子は原口に泊まっていく様に言い寝室(直子と聡子の部屋)に案内した。
寝室に入ると原口は壁にかけてある絵を見て驚いた。
「ほぉー!こ…これは!!これはどなたが描かれたんですか!?」
「これは次女です。直子の絵です」糸子が答えると直子が原口の寝室にやってくる。
「…君か!?君が描いたのかい!?」
「はい」
「あとはアンタらお話しい」糸子は直子を部屋に残して襖を閉めた。
>結局、朝方まで原口先生は直子と絵の話をしたようでした。
― 翌朝、千代に壁の“亀裂”を相談された原口は直子にペインティングナイフを借りて修復作業をしていた。その姿を直子は後ろで黙って見ていた。
「君は高校出たらどうするんだい?」原口は作業しながら尋ねた。
「美大にいきます」
「美大か…だけどお母さんの跡を継ぐなら美大は遠回りじゃないかい?お姉さんの様にすぐに服飾の専門学校に進んだ方が早いよ」
「跡なんか継ぎません。ウチは画家になるんです」
「あ…そうか、それは悪かったね(笑)…君は服よりも絵が好きってことか」
「いや…そういう訳でもないけど…店はもう姉ちゃんが継ぐって格好つけてるし…」
「なるほど。…じゃあ継がないで自分の店を持てばいいじゃないか…
「え?」
「それもそれで格好いい」
「…先生、もしうちが東京に行ったら教えてくれますか?」
「うん。…いいよ」原口はにっこりと笑った。
糸子は、原口を見送る直子の表情に気が着いた。
>直子はホンマに嬉しいと笑ってんのか怒ってんのか分からんようになる事があって
>こん時はどっちか解りませんでした。やっとどっちかわかったんかその夜…
「お母ちゃん、高校卒業したら東京へ行かさせて下さい。
お姉ちゃんと同じ学校へ行って原口先生のご指導を受けたいと思います。お願いします!」
直子はラジオを聴いていた糸子に土下座した。
「…そら、まあ…ええけど」糸子が答えると直子は不気味に笑った。
― 喫茶店“太鼓”で直子と聡子は北村にホットケーキを食べさせてもらっていた。
北村は優子と直子が糸子の跡を継がないと言っていた事を指摘した。
「…せやけどよう考えよ?
おかんとおねえと一緒の仕事ちゅうことは案外キツい話やど?
いっぺん同じ土俵にたったらな身内や言うてもお互い敵になるっちゅうことやからな。
おかともおねえとも…いつか闘わなあかん日が来るかもしれんど?」
「かまへん」直子は即答した。
「…ちっとは離れちゃあた方が気ぃは楽ちゃうか?」
「そら楽かもしれんけど…楽ちゃう方が…オモロい」
北村は言葉を失っていると聡子が北村の食べ物を凝視していることに気が着いた。
「…食えや!もう!言え!」
― 昭和33年元旦。
「ちょっと、このお豆さん、食べてみて。今年はうまくでけたんや」
千代は二人の孫を連れて来た糸子の妹・静子に黒豆を試食させた。
「うん、いや、美味しいわ!」
「はあ?嫌や!困るわ!そんなん勝手に決められたかて!」
優子は、興奮して大声をあげてしまう。
「何が困る事あるんよ?妹が一緒に住む様になるだけのこっちゃないか…
うちは東京の家賃2人分払える程お金ないんや」糸子はなだめようとする。
「大体、あんたは絵描きになるんちゃうんけ!?」
そ知らぬ顔でミカンを食べている直子を優子は睨んだ。
「…なんや知らん。考え変えよったんや」糸子が答える。
「なんで今更洋裁なんか始めるんよ!洋裁はうちの道や!」
「うちの道て1人しか通れん道ちゃうがな。一緒に仲よう目指したらええやろ?」
「嫌や!絶対嫌や!!」
「はあ?何がそこまで嫌なんや?」糸子は首を傾げる。
「姉ちゃんはな…うちの才能が怖いんや…」直子が不敵な笑みを浮かべた。
優子はみかんを直子に投げつけると勢いよく外に出て行って号泣してしまう。
>優子が笑たら直子が泣き、直子が笑たら優子が泣く
>お父ちゃん、おばあちゃん、勝さん、…手に負えんわ。
【NHK カーネーション第103回 感想・レビュー】
もう誰が主人公かわからない展開になってきましたね。
原口先生、特に用事も無く寄った割りに直子の人生を変えていくとは…
最初、フジテレビの天達(アマタツ)かと思った(笑)
そんな天達先生、「なるほど!」「こ…これは!」等いちいちオーバーリアクションがウザ過ぎと思ったら直子に「それもそれでカッコいい」…直子が進路を変えるのもわかる渋さ。
直子が服飾の進路を選んだ理由が原口先生に惹かれてなの何となくわかったんですが、どこかに優子に勝ちたいという願望もあったと思いました。
そして優子が最後、泣いてしまう理由ですが…いまいち判りません。
本当に直子の才能が怖かったのでしょうか…それとも単に目障りに感じた?
この2人の関係が面白くなってきましたよ。
あ、あと静子は今日限定の復活なのかな?