「こんにちわ~」昭和33年、糸子は安岡美容院を訪れた。
「…糸ちゃん…いらっしゃ…い」
八重子は慌てて理容していた客を体で隠すが、糸子にバレてしまう。
「あ!あんた何パーマなんかあててんや!!」
直子がパーマをあてている姿を見て糸子の表情が変わる。
「ええやん!高校も卒業したんやし…」直子が口をとがらせたながら言った。
「あかん!スネッかじりが!パーマなんぞ100年早いわ!」
「せやけど!こんな頭で東京行ったら田舎モンやてバカにされる」
「田舎モンで何が悪いんや。岸和田より東京が偉いて誰が決めたんや!言うてみ!」
「お母ちゃんにはかなわへんわ。…カットで我慢しよっか!(笑)」
八重子はスタッフに直子のパーマをやめるように指示をした。
「何で、こんな時に来るんよ~」直子はふてくされてしまう。
「せや!こんなで来たんちゃうかった!八重子さん!よう見せて!」
「おかげさんでなあ、センスが良くてモダンやてお客さんにも評判なんやし(笑)」
「せやろ?うちもごっつい自信作や~(笑)」
>この春、八重子さんに頼まれて安岡美容室の制服を一新しました。
「せや!糸ちゃん!ディオールの最新のデザイン見た?」
糸子は八重子と雑誌に掲載されていたフランスのデザイナーである“ディオール”と“サンローラン”のデザインを見て話し合う。
「…何これ?こんなん、ただのアッパッパやん!」糸子は写真の服を見て言った。
「せやろ?トラペーズラインとかいうらしいんやけど…台形ちゅう意味らしいねん」
「あかんわ!『ただのアッパッッパやで』ちゅうて誰か怒っちゃったらエエのにな!」
残念がる糸子の後ろで直子はまだパーマをあてられなくなったことに落ち込んでいた。
>変なとこで妙に気にしいの直子は
「あんた荷造り、まだすんでへんけ!?」
「東京に持って行ける服ない!」
>急にこんなことを言い出します。
「コラ!聡子!うちの階段で足鍛えんなちゅうたやろ!」
糸子は階段を行き来する聡子を注意した。
「はあ…」大きくなった聡子が不思議そうな顔で返答する。
>聡子はネジ五本くらい抜けてるようなカオして、これで案外テニスは強いらしい。
糸子が居間に戻ると北村と千代がお茶を飲みながら談笑していた。
「コラ!誰の許しをもろて勝手に家あがってんじゃ!」糸子は北村に言った。
「昌子が言うさかい…ワイかて、ごっつい忙しいのに上がっちゃったやんけ!」
「ほな北村さん、今日はええ塩辛がありますよって。あとで」
千代は微笑んで席を立った。
「あら!そんなお母ちゃん構わんとってよ~(笑)」
「ないない!こいつに食わせる塩からなんかない!」糸子は台所へ言った千代に言った。
その隙に北村は胸ポケットから手帳を出すと名前を確認した。
「ところでよ“サンローラン”が新作出したの見たけ?春夏のトラペーズライン!」
「…なんで知ってんや?」糸子は意外に思って北村に尋ねる。
「常識でしょう!ワイもこの道10年やってるさかいのう!
ワイとこの店も売り上げ伸ばしてんやし…レディメードはこれからもまだまだ伸びる!
…せやからよ…ワイここいらでよ、一発勝負かけちゃろ思てやんし」
「ほうけ?」糸子は興味なさそうに言った。
「ほんでやな…わいと組まへんか?」
「嫌じゃ!何が悲しくてホラ吹き男と手組まなあかんねん」
糸子は、そのまま体を横にした。
「ワイは商売ではホラ吹いた事無いちゅうねん!」
「あ、ええとこきた、あとこいつの相手をして」
糸子は降りてきた直子に北村に相手をするように言う。
「知ってけ?トラペーズライン…今年のディオールの新作や」
北村は雑誌を取り出し直子に見せた。
「…ええな」直子は写真をみて短く言った。
「せやろ?おっちゃん、夏に向けて一発打ち上げちゃろ思てんやし」
「こら!ええかげんな事言うな!どこがええんやそんなアッパッッパ!」
直子の反応に驚いた糸子は直子を注意する。
「そんな事ないで?ええで」直子は糸子にもう一度伝えた。
「…分かってへんな。日本人が来ている所想像してみ?腰のくびれもない丈も中途半端…こんなもんこさえたかて売れるかいな!」
興奮した糸子は体を起して力説を始める。
「ほな、どんなんやったら売れるちゅうのよ?」北村が尋ねた。
「今まで通りののこう…やめとこ…なんで説明せなあかんねん」糸子は再び体を横にした。
「ええんやけどな…これ」
直子が三度服のデザインを褒めたので糸子は直子をみつめた。
― 直子が東京へ旅立つ日、朝から直子は東京へ行く服について決めかねていた。
糸子に注意されると、しばらくして直子がセーラー服を着て降りて来る。
「あんた…あんだけ騒いで結局それかいな…」
「中途半端な格好しか、でけへんやったらこれのがマシや」直子は仏壇に手を合わせた。
>はあ~このけったいな見栄っ張り、誰に似たんやろな?
糸子は父・善作、祖母・ハル、夫・勝の写真を見た。
>ほんなややこしい娘でも、おらんようになってまうと…寂しいもんやなあ…
直子を駅まで送った後、糸子は直子が使っていた机の上にてを置いた。
机の上にあるノートを取り出し、“小原直子”と書かれた名前を指でたどった。
― そんなある日
「せーの…ほい!」糸子が布をめくり上げるとテレビが現れた。
「わあー!!」テレビの前に集まっていた千代や縫い子達、木之元、気岡は歓声をあげる。
>とうとうウチもテレビジョンを買いました!
糸子達は早速テレビをつけ“のど自慢”を観て皆で楽しく大合唱するのだった。
【NHK カーネーション第104回 感想・レビュー】
聡子だけ一週間で役者交代…いいと思います。
とてもよく天然さが受けつかがれているキャスティングかと。
今日は、優子が出なくて直子が昔の糸子とダブるようなシーンが数多くありましたね。
先週末に北村の顔を見て「その方がオモロイ」って不敵に笑うところは善作、今日の服とかで悩んで部屋で寝転がるのは糸子と…とてもわかりやすくDNAを受け継いでます(笑)
優子は静子に似てるから先週に少し静子が出てたのかな?
直子が居なくなって寂しくてテレビを買う糸子ですが、昔、善作もそんな理由でラジオを購入してましたね。いやいや、こういう演出好きです。