昭和48年3月のある朝、ロンドンへ向かう聡子は、皆にに見送られる。
泣きながら見送る千代を聡子は抱きしめた。
「おばあちゃん。これが聡子の顔やで。忘れてんといてな!」
「…わかった。忘れへん!」千代は号泣しながら聡子の顔を両手で触った。
「いくで?そろそろ」糸子が聡子に声をかけた。
「…ほな、いってきます!」
>昭和48年聡子がホンマにロンドンに行ってまいました。
― 心斎橋・優子の店、優子と糸子はソファで聡子の話をしていた。
「あの聡子がなあ…ウチより直子より先に海外行ってしまうて笑うわホンマ」
「あんた、東京出るんか?」
「ああ…うん」
「…離婚するんか?悟さんと」
「うん…そのつもりです」優子は微笑みながら言った。
「言わんかいな~そんな大事な事…何でウチが北村からきかなあかんねん」
「すんません。お母ちゃん、心配するやろ思てな(笑)」
「するやろけどな…そのための親やろ?」
「…うん」優子は嬉しそうにうなずいた。
「おかあちゃんは?北村のおっちゃんから聞いたけど悪い話ちゃうと思うで」
優子は糸子が北村に東京進出を誘われている話に変えた。
「…あんたらな?東京東京て何でそんなに東京へ行きたいの?」
「そら経済でも文化でも東京が中心やもん。うちらアパレルが本気で会社を伸ばして行こう思たらまずは東京が拠点やないと話になれへんねんて。
例えば、ウチの構想はな、まずは東京に本店を構えて全国にばーっと店舗を増やして行く。
ほんでな5年後には店舗を売り上げを30倍!ほんでなそれを基盤にしてな…」
優子は目を輝かせながら話すが糸子は眠そうにそれを聞いてた。
>聞くんは聞いてたんけど、優子の話をウチは何もオモロいとは思いませんでした。
― 夜、小原家に来ていた八重子が昌子に酒を注がれて飲んでいた。
「お銚子…まだつけよか?」
千代は台所へ行こうとするが糸子が昌子に手伝うように指示をする。
「この頃いよいよ危なっかしてな…一人で台所いかされへんやし」
「ほうけ…」八重子は心配そうに千代を見た。
「ほんでどないしたん?ウチに話て?」糸子が八重子が訪ねて来た用件をきいた。
「…ウチも、そろそろ店閉めさして貰おうかと思てんやし…太郎もそないして家へ来いちゅうてくれてな。確かにな一日の立ち仕事が堪える様になってきてるんや…ちょっと早いかなと思うんやけど…新しい暮らしに慣れんのにもそれはそれで力いることやさかいな」
「ほうか…寂しいなあ」
「…せやけど、糸ちゃんは、まだまだ頑張らんとアカンで!?
オハラ洋装店は岸和田一の名店なんやさかいな(笑)」
八重子はしんみりした糸子を励まそうと明るい口調で言った。
「…それがな、ウチも東京に誘われてんやし…優子が来年東京へ行くんやて。北村も行くんやて。直子もおるやろ?せやさかい、お母ちゃんも来いて」
「…余計な事を言うてしもたな…堪忍な…。
せやけど東京行けたらええやんか!格好ええし!」
「あー!しぃー!!!」
昌子が台所から戻ってきたので糸子は会話を中断させようとした。
「どうぞ。続けて下さい。知ってますさかい。
…うちも恵さんも先生のええようにしてもらうんが一番や思てます」
昌子が淡々と糸子に話した。
「…そら、おおきに」糸子は申し訳なさそうに頭を下げた。
「なかなか無いですよ?そないエエ話…決めたらエエんとちゃいますか?」
「…迷てんの?」曖昧な返事をしていた糸子に八重子が聞いた。
「正直、よう判かれへんねん…東京に出るんと岸和田に残るんと…自分はどないしたいんか。どっちの方がオモロい思てんか…その肝心なところが自分でもようわからへん
…情けないこっちゃ」糸子は少し笑みをこぼす。
「そら東京の方がオモロイんちゃいますか?
皆あない東京に行きたがるんはよっぽど東京がオモロいからでしょう?」
「いや、あらな…なんちゅうか…新しいゲームが始まってもうてんや。優子の話を聞いていたら何やそんな気がしてくるんや。ようさんでやるゲーム…それがえらいオモロいらしい」
「やっぱりオモロいんやないですか!」
「しんどいやろ…ゲームて…」糸子は体を横にした。
「敵ばっかしおって頭ばっかし逆上せて…ウチはな洋服こさえられたら、ほんで良かったんや…それがいつの間にか洋服もゲームになってしもた。
ウチに洋裁を教えてくれた根岸先生ちゅう先生がなこない言うたんや
『ホンマにエエ服は人に品格と誇りを与えてくれる…人は品格と誇りを持って初めて希望が持てる』…」
「わかるわ…」:八重子は何回も頷いた。
「今はモードの力、ごっつ強いやろ…去年最高に良かった服が今年はもうあかん…どんなけええ生地で丁寧にこさえたかて…モードが台風みたいに全部なぎ倒してってまいよんねん」
「そうですね…」昌子が頷く。
「…人に希望を与えて簡単にそれを奪う…そんな事、ずーっと繰り返してきた気すんや
…あかん!愚痴になってしもたな…年やな(笑)」糸子は体を起した。
すると八重子が大きな声を出して糸子を叱責した。
「そない事ないやろ!糸ちゃん!情けないわ!!ウチは情けないわ!!」
八重子は勢いそのままに小原家を飛び出していってしまう。
「…何でウチは怒られてん?」糸子は昌子に静かに質問した。
>それから10分ほどして八重子さんが戻って来ました。
「ウチの宝物や!!」戻ってきた八重子は風呂敷を糸子の膝に乗せた。
風呂敷の中から玉枝や奈津と撮った写真と当時の安岡美容室の制服が出てくる。
「ボロボロやったウチに…ウチとお母さんと奈っちゃんに希望と誇りをくれた大事な大事な宝物や!ウチはこれのおかげで生きてこれたんやで!!」
八重子は号泣しながら糸子に向かって声を張り上げた。
>ひっぱたかれたみたいでした…
>昔の自分にひっぱたかれたみたいでした。
【NHK カーネーション第126回 感想・レビュー】
ちょっと意外な展開でした。
八重子が糸子にキレたのは、酒の力もあったからだと思いたい(笑)
まさか糸子のボヤキに八重子がキレるとは…そして『根岸先生』が出てくるとは…
さて、冒頭で聡子がロンドンへ行きますが、千代のボロ泣きに危うく貰い泣きするところでしたよ…。それに対して聡子の泣き方が弱いような感じでした。
今日は、あまり進展という進展がなかったのですが、周りの老いというか時代の変化を感じる回でした。千代や木岡夫妻はめっきり老け込んでしまったし、小原家には冷蔵庫とレンジ?が導入されていたし。
明日はいよいよ主役交代です。
周りも一気に交代するんでしょうか。