「ほんな訳でな、これから娘らの手伝いは一切せんでええ。
その代わりに新しいブランドの仕事が始まる事になる…慣れん事やし、立ち上げはホンマに大変やろうけど…どないか頑張ってついて来て欲しいんや。よろしゅう頼むわ!」
糸子はベッドから孝枝と浩二に伝えた。
「そら!先生がそない決めたんやったらウチらは出来る限りの事します!」
孝枝と浩二は笑顔で糸子に応答する。
「おおきに…ホンマに大変やさかいな。アンタらは最近のこののんびりした店しか知らんやろけど…あんたらの前の2人ちゅうたら…」
糸子は若い頃にオハラ洋装店で働いていた昌子と恵を思い返した。
>どんなけ声からしてウチに文句ばっかり言うてたか…
「ほんな先生に文句なんか!ウチらは、心から先生の事を尊敬しているんです。黙ってついていくだけですわ!」
>ちゅうて言うてくれた孝ちゃんでしたが…
― ある日、商社に勤める高山守にプレタの仕組みについて孝枝は説明を受けていた。
「あのね!プレタはオーダーと違って金になるまで時間がかかるの!…生地代、付属品代、工賃、人絹品、営業費…銀行からの融資が必要なくらいなんです!」
「ちょっと…わからんへん…それは借金せな、あかんちゅうこと?」
「…ちっ!」高山は、なかなか理解できない孝枝に苛立ちを感じ舌打ちをした。
「お宅、今、舌打ちしました?」孝枝が興奮して高山に質問する。
「してません!」
「ウソや!舌打ちした!したやろ!」怒りが限界に達した孝枝は高山に飛び掛る。
「ちょっと!どないしたん?孝ちゃん!」
後ろで栄之助や譲とデザインについて打ち合せをしていた糸子が尋ねる。
「先生、もう無理です!ついていかれません!」孝枝は遂に泣いてしまう。
「守!アンタまたキツい言い方したんやろ?」
「…はーい」
「…こんな嫌な思いしたことないわ!前の平和な店に戻りたいです~(泣)」
「まあまあそう言わんと座りぃな」
>一方、浩ちゃんは案外辛抱強い性格で頼りになるちゅうことがわかりました
糸子の指示に忠実に従う浩二に感心している後で孝枝が高山に紙をぶつけていた。
「あー!!!もう嫌!もうわからへん!!」
「仕事なんや!歯食いしばってやらんかいな!」糸子は孝枝を再びなだめた。
― 商店街を里香が買い袋を下げて歩いているとその横を神山が自転車で通り過ぎた。
里香は買い物袋から“たわし”を取り出して神山に投げつけた。
「…里香ちゃん?」
「そうだよ」
「何その格好?ここ髪きゅってやつは?」
「やめた」
里香は神山の自転車のカゴに荷物を載せた。
「かいらしかたのに…」
「わるかったな」
2人を見かけた女子学生達は神山と歩いているのが里香とは気がつかないのだった。
「…誰?あの小学生」
「妹ちゃう?」
「ああ妹おる言うちゃったな…」
― 栄之助は糸子に和服の生地を見せた。
「こんなところかな思って持って来たんですけど…どないでしょう?」
「やっぱしな…こないだ言うてたドレスこれで作ろう!」
糸子は生地の肌触りを確かめながら栄之助と譲に言った。
「先生、柄合わせがそない簡単にはいかへんのとちゃいますか?」
「模様の入り方も全然別モンやさかいごっつい計算がややこしなりますよ」
浩二と譲は糸子の意見に待ったをかけるが糸子はニヤリと笑った。
「…せやけど子の柄、オモロいで…よし!やろ!」
「え?」糸子が言う事を躊躇せずに決断したので譲達は驚いた。
「若い子らが無理やと思う事こそやったらんでどないすんねん!年とってる意味ないがな」
糸子はそのまま作業を開始するのだった。
孝枝は我慢しながら高山の話を聞き、糸子達はデザインを夜遅くまで行っていた。
「やった…でけんで…やっとわかった…」
糸子と浩二は、生地の柄あわせを解決する方法をみつけた。
すると糸子がフラっと足元が崩れる。
「先生!?」
「何も無い…ちょっと目眩しただけや…」
しかし、糸子は床に倒れてしまう。
>調子のって無理しすぎる…ウチの人生なんべんそんで怒られて来た事か…
「おばあちゃんお水とかいる?」
浩二に布団に運ばれた糸子に里香が尋ねた。
「ううん、ええ。…里香…お母ちゃんらに言うたらアカンで…」
>ちゅうて周りはどないかごまかせても…体だけは誤摩化せません
早朝、糸子は仏壇を開ける。
>相変わらず『アホやなあ』ちゅうてて見てんやろ?
糸子は善作達の写真を見た。
「その通りや。…おはようさんです…イテテテ」
― 糸子は高山の提案に耳を疑った。
「宣伝?…娘らは別に関係ないやろ?」
「あんなビッグネームが三人もいるんですよ?」
「せやけど嫌やで。あの子らの名前にぶら下がって宣伝すんのなんか!」
糸子は商品に自信があるから娘達を客寄せに使わなくてもと高山に伝えるが。
「そりゃ3年先の話です。全国にどれだけオハライトコを知ってます?」と質問される。
「…そら全国ちゅうほど…知られてないけどな…うっとこの服いっぺん着てもろたら…」
「そんな悠長な事を言っている暇はないです。すぐに次作る資金なくなりますよ?」
高山は岸和田の洋裁屋のオバちゃんが作った服では誰も聞く耳をもってくれないと説明した。糸子はその高山の言動に目を丸くする。
「…娘さん達には何が何でも宣伝協力してもらいます。それなしに絶対成功しません!」
「うーん!むきー!孝ちゃーん!!こいつ腹立つ!!!」
糸子は隣の部屋で作業をしている孝枝に言った。
「知りませ~ん。うちはちゃんと耐えぬきましたよって先生も耐えてくださ~い」
孝枝が素っ気無く言ったので糸子は口を尖らせて我慢することした。
【NHK カーネーション第137回 感想・レビュー】
確かに腹立ちますね~言っている事が正しいだけに余計に?
まあ、ピンクの電話の孝枝さんもそれはそれでイラッと少ししますが…(笑)
久しぶりに昌ちゃんと恵さんが出てきましたね。
なんか物凄い昔のようですが…2週間しか経ってないんですね。
今日、ハッキリと判ったんですが、小原糸子の晩年ってとてもいいセリフが多いです。
『仕事なんや!歯食いしばってやらんかいな!』とか
『若い子らが無理やと思う事こそやったらんでどないすんねん!』
この2つのセリフは、心に響きました。